4月に始まった日米の貿易交渉が、異例の早さで大枠合意した。

 安倍晋三政権が米国に求めた自動車関税撤廃を見送る一方、米国産牛肉を日本に輸入する際の関税38・5%を段階的に9%に引き下げることなどで合意したという。

 来年の大統領選を控えたトランプ氏に外交成果を与えるのと引き替えに、日本は早期決着を図り、自動車への追加関税や数量規制が議題になるのを防いだといえる。

 交渉は当初、為替操作の阻止や関税以外のサービス分野も対象に含めるとされたが、その後、農産物や自動車など物品関税を先行させて議論することになった。安倍政権としては、幅広い分野で攻め込まれることを回避した形だ。

 合意では、工業製品の多くの分野で関税が撤廃・削減の対象となったという。だが、具体的品目名は明かされていない。コメに設ける無関税枠の結論も先送りした。

 茂木敏充担当相は「日米双方に利益になる」と強調したが、日本の国内産業にどのように影響するか、現時点でははっきりしない。合意が日本にとってメリットのある内容かどうかは見えにくい。

 自動車関税については環太平洋連携協定(TPP)交渉で、2・5%の関税を25年かけて撤廃することになっていた。しかし、車輸入を安全保障上の脅威としてきたトランプ政権にとって、関税維持は譲れないテーマだった。

 TPPを離脱し、米国産牛肉に従来通りの関税が適用される現状も、他国から低関税の牛肉が輸入される日本市場では不利になる。

 合意内容は、自動車や農業といったトランプ氏の支持基盤へ安倍政権が配慮した面が否めない。

 米国産農産品の関税について、安倍政権はTPP水準まで引き下げる方針で交渉に取り組んだようだ。乳製品のほか豚肉、小麦などが交渉対象だが、工業製品と同様に具体的な合意内容は明らかにされていない。

 交渉の最終局面で、対象外だったワインが含められ、安倍首相は米国産トウモロコシ購入を表明した。押し切られたのではないか。

 TPP水準であっても、安価な農産品の輸入は日本の農業を直撃する。政府の試算では、国内の農業生産額はTPPで年1500億円減少する。実効ある対策が急務であることに変わりはない。

 日米両政府は9月にも貿易協定への署名を目指すが、トランプ氏が合意への態度を変える可能性も指摘される。上下両院でねじれる米議会の出方にも留意が必要だ。