公的年金制度は持続できても、受給額の目減りは避けられない。

 そんな現状を改めて突きつけられたのではないか。

 公的年金の長期見通しを試算した5年に1度の年金財政検証の結果を厚生労働省が公表した。

 経済成長と就業が進む「標準的なケース」で、現役世代の手取り収入に対する給付水準(所得代替率)は現在の61・7%から2047年度に50・8%で下げ止まる。

 5年前の検証結果と同様、経済成長すれば政府が約束した「代替率50%」は維持できる試算だ。

 ただ、モデル世帯の年金の実質的価値は2割近く減少、基礎年金(国民年金)部分に限ると約3割も低下する。

 経済が順調に伸びるなどとする前提に対しては「楽観的すぎる」との指摘もある。試算した6通りのケースのうち、低い経済成長を前提とした3ケースでは、代替率が50%を下回った。

 賃金や物価の伸びより給付額を低くする「マクロ経済スライド」で給付水準は目減りしており、老後生活への影響は大きい。年金受給の将来見通しの厳しさを、しっかり受けとめねばなるまい。

 今回の検証でも、今後に制度の見直しを進めた場合のオプション試算を行っている。

 会社員らが加入する厚生年金の適用範囲を広げてパートなど短時間労働者を加入させたり、加入期間を現在より5年延長したりした場合、給付水準は一定程度増加するとの結果が出た。

 厚生年金の財政は保険料収入増で改善し、厚生年金に移る人が増えることで国民年金の積立金を分け合う人数が減って国民年金の財政も好転するという。

 受給開始時期を75歳まで遅らせて働き続ければ、65歳までと比べて給付水準が最大1・7倍になるとの試算も示した。

 保険料を払う人を増やし、高齢者により長く働いてもらうことで、年金制度の「支え手」を広げようとの意図が読み取れる。

 少子高齢化が進む中、制度の維持には負担と給付のあり方を見直していくことは避けられない。

 ただ、厚生年金の対象拡大では保険料を折半している企業への説得が欠かせない。就職氷河期世代が非正規雇用のまま老後を迎えることも想定した制度設計も要る。

 持続可能な年金制度は政治の責任だ。今回の財政検証を受け、政府は高齢者が直面する生活実態をふまえた議論に腹を据えて取り組んでほしい。