フランス南西部ビアリッツで開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)がこれまで通りの「首脳宣言」を出さずに閉幕した。

 首脳宣言は1975年の第1回会議以来、必ずまとめられてきた。先進国が互いの利害を超え、世界の課題について一定の方向性を示す。サミットで最も重要な文書である。

 だが議長国フランスのマクロン大統領ははじめから取りまとめを目指さなかった。

 世界経済や自由貿易、地球温暖化などを巡り、米国のトランプ大統領と各国首脳の溝が深いことが明らかだったためだ。

 今回はそれに代わり、イランや香港などについての5項目の簡潔な合意文書がまとめられた。

 イランの核兵器保有阻止や香港での暴力回避などが明記されたが、地球温暖化防止に向けた「パリ協定」には触れていない。来年の協定スタートへ不安が残った。

 減速感が強まる世界経済に対して、各国首脳は懸念を共有したが具体的対応は明示できなかった。

 北朝鮮の核問題でも、安倍晋三首相は「北朝鮮の完全な非核化の必要性を指摘し、賛同を得た」と成果を強調したが、実際に大きく取り扱われたとは言い難い。

 包括的な首脳宣言をまとめた6月の20カ国・地域(G20)首脳会議に比べ、G7の足並みの乱れは際立つ。

 一方で、サミットの場を利用した2国間会談は一定の成果を上げた。

 マクロン氏はビアリッツにイランのザリフ外相を招き、米国との直接対話を促し、トランプ氏にもイランとの首脳会談を求めた。

 記者会見でトランプ氏は「(首脳会談は)環境が整えば可能」と話し、マクロン氏はイランからも前向きな考えを聞いたと述べた。

 ハードルはまだ高いが、対立一辺倒の米・イランを最近になく近づけたのは、マクロン氏の外交手腕といえよう。

 G7各国は本来、自由主義や人権尊重、環境重視といった普遍的理念を共有する。サミットはそうした理念を世界に発信する場であるはずだ。

 議長のマクロン氏が合意の難しい首脳宣言を回避し、個別問題に取り組んだのは、メッセージを発信するサミットの役割を重視したからではないか。

 G7サミットの根底に流れる国際協調主義は明らかに危機に直面している。各首脳はサミットの意義を互いに確認してもらいたい。