3面の宗教壁画を飾る別館内部。建物の老朽化が進むが後継施設のめどは立たない(大津市打出浜・県立琵琶湖文化館)

3面の宗教壁画を飾る別館内部。建物の老朽化が進むが後継施設のめどは立たない(大津市打出浜・県立琵琶湖文化館)

湖岸に面した和城連立様式の琵琶湖文化館(大津市打出浜)

湖岸に面した和城連立様式の琵琶湖文化館(大津市打出浜)

琵琶湖文化館を巡る経過

琵琶湖文化館を巡る経過

 滋賀県ゆかりの文化財を収蔵、調査研究する県立琵琶湖文化館(大津市打出浜)が休館して11年が過ぎ、建物の老朽化が著しい。今も国宝、重要文化財を含む約1万1千点を保管するが、後継施設が定まらない現状から、これらの品を寄託している社寺の中には移管を検討する声も出始めている。

■貴重収蔵品、県外流出懸念の声も

 「10年が失われた」。7月上旬、文化館の機能継承を再検討する県主催の有識者懇話会で、委員から厳しい意見が相次いだ。2008年に休館後、いったん継承先として決まった新生美術館の整備計画が、18年11月に頓挫したからだ。

 本館と別館の和城連立様式が特徴的な文化館は、県内初の公立博物館として1961年に開館した。近年は電気や給排水設備の老朽化が進み、最上階の「展望閣」はビニールシートを使って雨漏りや吹き込みを防いでいる状態。「階下の収蔵庫は問題ない」(県文化財保護課)とするが、建物に耐震性能は乏しく、防災面の不安が拭えない。

 文化館は、戦後間もない48年から全国に先駆けて文化財を収集した県立産業文化館の資料を引き継いでおり「全国でも有数の質と量」(同課)を誇る。今年3月末で国宝17点、重要文化財89点、県指定文化財3475点などを収蔵。滋賀県は国宝・重要文化財の指定件数が都道府県別で全国4番目に多く、建造物以外の国宝・重文の約10%を文化館が収蔵する。また、全収蔵品の7割が社寺や個人からの寄託品だ。

 国宝「金銀鍍透彫華籠(とすかしぼりけこ)」を所有する神照寺(長浜市)は、16枚の華籠を東京、京都、奈良の各国立博物館などに分けて寄託しており、文化館にも2枚を寄託する。岡本承典住職は「きれいな華籠を見てもらえないのはもったいないことで、他にいい施設があれば移そうかと思う」と話す。別の社寺からも建物の耐久性を危ぶむ声や後継施設の早期整備を求める声があり、専門家は「一度出たら戻ってこない」と文化財の県外流出を懸念する。

 休館前は琵琶湖学習船「うみのこ」の寄港地の一つになっており、大勢の小学生が来館していた。現在、収蔵品の一部は他館で展示するなどしているが、出品物や期間は限定的にならざるを得ない。

 懇話会は本年度、後継施設の立地や規模を再検討し、素案をまとめる予定だ。素案を受けて県が施設を整備するのは21年度以降で、常設展示のできる本格的な館を新設するとなれば、完成までにさらに5年はかかるともみられている。文化館の機能継承の在り方とともに、今ある文化財を劣化や県外流出のリスクから守り、展示・活用の機会を増やす工夫が求められている。