亡き夫の惣一さんと考案したという「カレー肉づめ」

亡き夫の惣一さんと考案したという「カレー肉づめ」

60年以上天ぷらを揚げてきた麗子さん。お店には高校生たちの寄せ書きや絵も飾られる(京丹後市峰山町千歳)

60年以上天ぷらを揚げてきた麗子さん。お店には高校生たちの寄せ書きや絵も飾られる(京丹後市峰山町千歳)

 創業64年。京都府京丹後市峰山町の市街地で静かなたたずまいを見せる黒田てんぷら店の入り口を開けると、店主の黒田麗子さん(84)が笑顔で迎えてくれる。コロッケやトンカツ、野菜天。変わらぬ味で地域の食卓や高校生の胃袋を満たしてきた。
 店開きは高度成長期が始まろうとする昭和30年代初頭。間人の漁師だった夫の惣一さんと2人で峰山の町に店を構え、今の場所である丹後織物工業組合の旧事務所跡に移った。
 「二十歳で初めての仕事。とにかく一生懸命だったでな」。惣一さんとの二人三脚の日々を振り返る。「高校生が昼に抜けてよう買いに来てくれた。寄せ書きや絵を描いてくれてな。今も大事に張ってる。元気にしとるか言うて来てくれるのがうれしいんだな」。人との出会いが仕事を続ける喜びだという。
 お店の周りは飲み屋街。酔客たちもはしご酒の合間に天ぷらをつまんだり、次の店にお土産で買っていったりしたそうだ。10年ほど前まで、店先にうどんの自動販売機があった。自家製のだしと天ぷら入りのうどんもまた酔客に人気だった。年越しそば代わりに食べたと懐かしがるお客も。
 18年前に亡くなった惣一さんと考えたという「カレー肉づめ」を頰張る。カレーをはんぺんに包んで揚げたオリジナルの品。麗子さんは言う。「店をやって子ども3人が大きくなったで十分。幸せだ。人生はなるようにしかならん。慌てずゆっくり歩んだらええわな」。穏やかな時の流れと優しい味が広がった。

 黒田てんぷら店 京丹後市峰山町千歳58。コロッケや鶏串、トンカツなどの定番商品、野菜天、カキやトビウオなど季節の海産物のフライもある。正月以外は無休。午前8時~午後9時。0772(62)1566。