古事記を題材にした著作を手にする細見さん

古事記を題材にした著作を手にする細見さん

 京都府長岡京市在住の元新聞記者でジャーナリストの細見三英子さんが、著作「阿礼の物語~もうひとつの『古事記』」を出版した。古事記の編さん者の稗田阿礼が語り部となって登場し、古代からの伝承とともに、自身が仕えた女性天皇の活躍ぶりなどを生き生きと伝える。

 古事記は、日本書紀と並ぶ日本最古の歴史書で712年に完成した。稗田阿礼が口述した内容を役人の太安万侶が書き写したとされ、世界の成り立ちにまつわる神話や皇位継承の様子などが物語として描かれている。阿礼の人物像については諸説あるが、細見さんは、天皇家に仕えていた女性だったとの見方で、今回の著作を執筆した。
 「阿礼の物語」は、60歳を超えた主人公の阿礼が、自身の出身地である伊勢国を振り返る場面から始まる。皇極、斉明、持統、元明の4代の女性天皇を含む8代の天皇に仕えた半世紀以上の間に起こった出来事を、実際に古事記に描かれている伝承を交えながら語っていく。天智天皇の皇子である建王(たけるのみこ)が幼くして亡くなる場面では、白鳥になったヤマトタケルや、兄と夫の双方への愛から自死を選ぶ佐保姫など、古事記の中でも悲劇の伝承が対比的に紹介されている。
 着想から10年を費やして著作を完成させた細見さんは「ジェンダーの視点で日本の古代史を読み解きたかった。物語の主人公として女性が多く登場する古事記に親しむきっかけとして読んでほしい」と話している。文芸社刊。770円。