銀閣寺や金閣寺の古材を活用して作られた名刺入れ。寺院名の焼き印が押されている

銀閣寺や金閣寺の古材を活用して作られた名刺入れ。寺院名の焼き印が押されている

古材を使った小物を製作する職人。丁寧で確かな手業が工業製品にない魅力を生み出す(長岡京市・高野竹工)

古材を使った小物を製作する職人。丁寧で確かな手業が工業製品にない魅力を生み出す(長岡京市・高野竹工)

金閣寺の古材を用いた酒器。内側を漆とスズでコーティングしている

金閣寺の古材を用いた酒器。内側を漆とスズでコーティングしている

 京都の寺と聞けば、金閣寺(鹿苑寺)や銀閣寺(慈照寺)を真っ先に挙げる人も多いだろう。室町時代の北山文化と東山文化をそれぞれ代表する伝統建築物で、ユネスコの世界遺産でもある。そんな有名寺院の古い建材を加工した名刺入れが近ごろツイッターで紹介され、注目を集めた。ほかにも料理や酒を入れる器などがあるらしい。何百年という歴史を刻んだ逸品は、まさにタイムカプセルそのもの。製作を手がけた京都の竹材工芸会社に、商品化の経緯を尋ねた。


 京都府長岡京市に工房を構える高野竹工。府内で採れる良質な竹を使い、茶杓や棗(なつめ・抹茶を入れる茶器)などの茶道具や社寺の授与品、インテリア、内装材などの幅広い工芸品を手がけている。
 「寺院の古材を扱うようになったのは約40年前からですね」。営業第二課の西田隼人課長がいきさつを説明してくれた。
 初代社長の高野忠男さん(故人)は、茶道具の製作などを通じて京都の大寺院との付き合いが深かった。その縁で、国宝や重要文化財(重文)クラスの建物を修繕した際に不要となった古材を引き取るようになったという。当初は茶道家の依頼に応じて作る茶道具に使っていたが、10年ほど前から一般向けの小物やインテリアへと用途を広げた。
 「当社には竹の加工だけでなく、木工や漆塗り、デザインなど、幅広い技術を持つ職人が20人近くいます。そうした人材を生かさない手はない。各自がアイデアを出し合い、古材ならではの特徴を生かした商品作りに取り組んできました」
 金閣・銀閣の古材を用いた名刺入れは、きめ細かい木目の肌触りや風合いが、枯淡な味わいを醸す。内側にマグネットが仕込まれているので、開閉の動作も小気味よい。
 同じく金閣寺の古材を使った猪口(ちょこ)は八角形の洗練されたデザイン。器の内側は漆塗りとスズを組み合わせた「錫蒔(すずまき)」という手法でコーティングしてあり、古色を帯びた木質とのコントラストが趣深い。
 菓子を入れる茶道具「縁高(ふちだか)」はもともと、杉の板戸にハスの絵をあしらった「杉戸絵」だった。江戸時代初期に狩野派の絵師によって描かれ、金閣寺の方丈を彩っていたが、平成の大改修で役目を終えたという。この世に二つしかない貴重な品だ。
 ほかにも、臨済宗相国寺派の大本山・相国寺(京都市上京区)や、千利休が手がけた国宝の茶室「待庵」(大山崎町)の古材なども工芸品に仕立ててきた。古美術の愛好家であれば垂ぜんの品々だろう。
 「これからも職人たちの技術で古材の質感をより生かした工芸品を送り出していきたい」と西田さん。京都ならではの素材と手業を生かしたものづくりに、今後も注目だ。
 高野竹工の製品は、直営店の「篁(たかむら)」(京都市東山区)や「ばんてら」(中京区)、複合商業施設「グッドネイチャーステーション」の店舗「KA SO KE KI(カソケキ)」で販売している。