中央省庁で退職者や裸眼視力が弱い人などを障害者として多数計上していた水増し問題が昨年8月に発覚して1年になる。

 政府は不足を補う大量採用を進め、今年末までに全省庁で法定雇用率(2・5%)達成を目指しているが、短期間で離職する人も多く、全35行政機関のうち13機関が未達成であることが分かった。

 各省庁は、職場が障害者の働きやすい環境になっているか、当事者の声を踏まえてしっかり検証してもらいたい。

 厚生労働省が、水増しのあった28機関を対象に離職者数などを調査したところ、昨年10月以降に採用した3131人のうち、5%にあたる161人が6月1日までに離職していた。

 大半が非正規職員で、理由は「体調悪化」が最も多く、転居などの「本人都合」、契約期間満了を含む「その他」などが続く。

 一方、採用された障害者を対象にした意識調査では、9割が仕事に「満足」または「やや満足」としているが、自由記述では「業務量が少ない」「職場で相談がしにくい」といった悩みを書いた人が目立った。

 実際に、当事者からは「手持ち無沙汰で、まるで社内ニート」といった仕事内容への不満の声が聞かれたという。

 政府は年末までに約4千人を雇用する計画だが、大事なのは「数あわせ」ではなく、職場に定着して働き続けられることだろう。

 やりがいや自己実現といった要求は満たされているか、意思疎通は不足していないか、仕事のミスマッチはないか、などについて各職場で点検し、適切に対応することが必要だ。

 水増し問題を受けて今年6月、行政機関への厚労省の監督機能強化を柱とする改正障害者雇用促進法が成立したが、障害者が働くための支援や合理的配慮の面で課題は多い。

 障害者支援のNPO法人は「サポートがあれば働ける人がたくさんいるのに、自立して働ける人しか雇用されない実態は改善されていない」と指摘し、介助者のほか障害者と職場の橋渡し役となる「ジョブコーチ」が必要と訴えている。

 加えて、在宅勤務などの柔軟な働き方も広げるべきだ。

 障害者雇用の趣旨は、能力を最大限発揮し、適性に応じて働くことができる社会を目指すことにある。中央省庁には、民間企業とも情報を共有し、模範となる雇用のあり方を模索してほしい。