感染の拡大が気がかりだ。

 中国・武漢市で発生した新型のコロナウイルスによる肺炎が、米国や香港などにも拡大している。

 中国では23日までに死者17人、発症者は570人を超えた。武漢市当局は空港や鉄道駅を出発する航空便や列車を停止し、公共交通機関も運行を取りやめた。

 1千万人を超える住民の移動を遮断する異例の措置だ。春節(旧正月)の大型連休を前に、感染の封じ込めを狙ったのだろう。

 大勢の訪日客が見込まれる時期でもある。日本も水際対策を強化し、感染者が出た場合の検査や拡大防止を万全にしておきたい。

 中国の専門家チームによると、武漢の市場で食用として売られていたタケネズミなどの野生動物が感染源の可能性があるという。

 武漢での感染者には医療従事者も含まれており、人から人へ感染するとの見方も示されている。

 人やモノが国境を越えて行き交う時代である。各国が連携して拡大防止に努める必要がある。

 とりわけ、発生地となった中国の責任は大きい。今回、感染が拡大した背景には、中国当局の対応の遅れが指摘されている。

 中国国内では昨年12月、原因不明の肺炎患者が続出しているとの情報がネット上に出回っていたという。だが武漢市公安当局は「事実でない情報を公表した」として8人を処罰したと発表した。

 報道機関に関しても、当局は独自取材を避け国営メディアの記事を使うよう求めるなど統制を強めている。2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際、報道規制によって危険性が共有されず、感染拡大を招いた教訓が生かされていないようだ。

 そればかりか、武漢市では今月18日、4万以上の家族が集まって春節を祝う食事会が行われたという。感染拡大の懸念をよそに、認識の甘さをさらけだした形だ。

 「予防・制圧」を習近平国家主席が指示したのは20日になってからである。情報公開に消極的な姿勢が世界に不安を与えることを、中国政府はよく考えてほしい。

 日本の外務省は、武漢市の感染症危険情報レベルを引き上げ、注意を促した。安倍晋三首相も23日の国会答弁で、中国からの全航空便で体調不良の自己申告を呼びかけるよう航空会社に要請するなど水際対策を強化すると表明した。

 ただ、感染の切迫度がさらに高まれば、強制力を伴った措置も求められよう。冷静かつ周到な対策を練っておかねばならない。