佐藤研一郎氏

佐藤研一郎氏

 15日死去した半導体大手「ローム」(京都市右京区)創業者の佐藤研一郎氏は、2004年の京都新聞社のインタビューに、経営者に必要な資質や自社の強みについて次のように語った。

 -今の好況をデジタル景気ともいいますが、その背景をどう見ますか。
 「確かにデジタルで情報を送受信すると非常に多くのデータが送れるようになる特長があるが、それがどんな景気につながるというのか。デジタル景気なんて皆さんがお作りになった言葉ではないか。十年も不景気が続くと、我慢していた買い換えの需要だって出てくる。街にある商品も随分安い。デフレの恩恵にあずかっているのに、気づいていないのではないか」
 「デフレは困ったという声もあるが、銀行や大企業がつぶれたという局部的な動きだけを見て言っているのでは。日常生活ではだれも困っていない。経済モデルはとっくに変わった。前の世界に生きている人は苦しく、現在の世界に対応した人は好調を続ける。そういうことではないか」
 -そうした新しい経済モデル下で、会社をどのように成長させますか。
 「中国が追いつけない新技術で生きていくことだ。追われる身なので後ろよりも速く走らないといけない。オリンピックで一位になる必要はない。それなりの大会で一位であることが大事だ。ただ、単純商品は二、三位に落ちるだろう。たとえば抵抗器。僕が抵抗器を作り始めたころは一個五円だが、今や月百億個作って一個十銭ぐらい。そこで中国などと競争して一位になるのは難しい」
 「技術の余力がある分野で勝負する必要がある。やはり品質、特に製品の寿命に関する品質が大事だ。それを支えるのは生産技術。新商品を開発することも、その商品を欠陥なく大量に作ることも先端技術だと思う」
 -品質という付加価値が現在の高利益につながっているといえますか。
 「品質を忘れると、中国や台湾との価格競争に巻き込まれてしまう。ただ、品質維持にはコストがかかるだけに、高いお金をいただいてもいいと思う。当社の品質がいいと顧客が認めてくださるから、高くても買っていただいている。結局、いいものは高く売れる。何を作らせても品質第一を掲げているし、それはこれからも変わらない」
 -飛躍を期待する新分野は。
 「バイオ事業だ。当社の場合は、半導体技術と生命科学を融合させた生命工学の分野を目指す。DNAがいいと思うんだが、当面は特殊な抗体や酵素をチップで検知して、体の中で起こっていることを調べる装置を開発している。わざわざ病院に行かなくても、家庭で健康状態を簡単に調べられる製品にしたい」
 -音楽財団を通じた若手音楽家の支援や大学への施設寄付など、社会貢献にも熱心ですね。
 「地域のためなんて、大それたことは考えてないけど、できるだけ多くの音楽家にできるだけ多くの額を援助していきたい。立命館大や同志社大、京都大に施設を寄付したのは、当社がここまで来られたのは大学のおかげという思いがあるから。大阪や東京に本社を置いていたら、いい人材は集まらなかっただろう」
 -理想の後継者像は。
 「顧客にも社員にも信望があるか、修羅場を切り抜けられる知恵と根性があるかだ。もう一つ、経営者に必要なのは運と努力とDNA。やはり持って生まれたものがないといけない。ただ、会長になって院政を敷きたくはないし、生きている間は続けたい。売上高五千億円、経常利益一千億円を常時突破させる最大目標もある。それが顧客にも信用されて、社員もこの会社にいて良かったと思える規模だと思う」