多様な形と色が特徴の琵琶湖産真珠(滋賀県守山市内)

多様な形と色が特徴の琵琶湖産真珠(滋賀県守山市内)

神保真珠商店が情報を発信するSNS(インスタグラム)の画面

神保真珠商店が情報を発信するSNS(インスタグラム)の画面

 生育環境の悪化から昭和末期に生産量が激減した琵琶湖産の淡水真珠が、国内外で見直されている。英ロンドンに日本政府が開設した文化発信拠点「ジャパン・ハウス」で昨秋から取り扱いが始まり、国内では絵本の題材になるなど知名度がじわじわと上がる。古くは万葉集に「近江の白玉」と詠まれた湖国の宝は、往時の輝きを取り戻せるか-。

 滋賀県庁の近くにある神保真珠商店(大津市中央3丁目)は、養殖業者から仕入れた真珠を加工・販売している。落ち着いた雰囲気の店内には指輪やピアス、ネックレスがずらりと並ぶ。価格は1万~5万円台が多い。

 先月中旬、店内に誕生日プレゼントに指輪を贈られて喜ぶ大阪府の女性(41)がいた。「すてきなのが見つかった。ずっと欲しかったから、めっちゃうれしい」。土曜だったこともあり、広島県や岩手県など遠方からの客足は途切れなかったが、大半の人は琵琶湖で真珠がとれる事実を「最近まで知らなかった」という。

 琵琶湖の養殖真珠はビワパールとも呼ばれ、「最盛期の昭和の時代には98%が欧米などへの輸出向けだった」と同店長の杉山知子さんは話す。

 母貝に球状の核を入れない「無核」養殖が特徴のビワパールは、多様な形と色合いが目を引く。「ペルシャ湾の上質な天然真珠に似ていたことから、インド人やレバノン人が買い付けに訪れた。国内ではほとんど流通していなかったため、存在を知る日本人は意外と少ない」という。

 杉山さんは知られざる琵琶湖の名産を知ってもらおうと、祖父の代から続く家業を5年前に日本人向けに転換した。会員制交流サイト(SNS)を駆使した情報発信や首都圏での展示販売会が奏功。ロンドンの目抜き通りにあり、ギャラリーや物販店が入る「ジャパン・ハウス」にも商品を卸すようになった。

 人気は広がり、昨年11月には琵琶湖の真珠をテーマにした絵本「しんじゅのこ」(リトルモア刊)が出版された。記念の原画展やトークイベントが今月にかけて東京で開催され、さらなるブランド力の向上が期待されている。

 ただ、生産現場の実情は厳しい。

 滋賀県などによると、1930年に始まった淡水真珠養殖の年間生産量は70年代初頭に6トンを超え、生産額は41億円に達した。しかし80年代後半になると、水質の変化から水草が異常繁茂し、母貝となる固有種イケチョウガイが生育不良に。2010~14年の真珠生産量は年11~12キロに激減した。17年には母貝を育てていた県真珠養殖漁業協同組合が解散に追い込まれた。

 こうした中、海水真珠を含む真珠振興法の成立を受け、県は淡水真珠に関する振興計画を策定。養殖と販売の連携強化や後継者の育成などを盛り込み、生産量を2020年に50キロへ引き上げる目標を掲げた。ただ、17年は24キロ、18年は速報値30キロと成果はいまひとつ。21年以降の計画も未定という。

 主課題の一つは母貝の安定供給に向けた技術の確立だ。県水産課は「漁場のモニタリングを継続し、生育に適した環境づくりに役立てたい」とする。

 杉山さんは「一度は忘れられた淡水真珠の文化や産業を救えるように、日本人に認めてもらえるものを届けていきたい」と話す。