「愛する女性の助けと支えなしには国王の重責を果たせない」。1936年、ラジオで国民に語り掛け、退位したのは英国のエドワード8世である。お相手は知人の妻だった。時の首相から王位か恋かと迫られ、恋を選んだ▼一連の出来事は、「王冠を賭けた恋」と呼ばれた。後を継いだ弟のジョージ6世は吃音(きつおん)を克服しながら任務をこなし、王室を守るしかなかった。映画「英国王のスピーチ」で紹介されている▼その娘が今のエリザベス女王だと知ると、なるほどとうなずく人も多いのではないか。独立を目指して王室から離れると、今年に入って突然発表した孫のヘンリー王子とメーガン妃に対して、公務から引退させる決断をしたとみられている▼伯父や父の生き方を眺めて育った。女王となって、王室の危機とされたチャールズ皇太子の離婚問題で、ダイアナ元妃に直筆の手紙を送り、事態を収拾したという▼王子夫妻の意向を受け入れる一方で、一部公務を続けたり王族の敬称を使ったりすることは認めなかった。筋を通したといえる▼クリスマスのメッセージ動画では「希望や信念を持って小さな前進を重ねよう」と国民に結束を求めた。欧州連合(EU)との関係も併せて、「離脱」だけですべての問題を解決できない、といいたかったのだろう。