自身の経験や父子家庭の現状を伝えるため、企業や大学などで勢力的に講演を行っている木本さん(京都市左京区・ノートルダム女子大)

自身の経験や父子家庭の現状を伝えるため、企業や大学などで勢力的に講演を行っている木本さん(京都市左京区・ノートルダム女子大)

 「突然妻に先立たれたり、家を出て行かれたりしたら、家の事は誰がしますか?」-。活動を始めて昨秋で5年を超えた、父子家庭を支援するNPO法人「京都いえのこと勉強会」。理事長の木本努さん(56)=京都市左京区=は依頼を受けた講演でまず、そう問い掛ける。自身の経験も踏まえ、「父子家庭の存在に気付いてほしい」と、積極的に情報発信を続けている。

 木本さんは2009年、妻をがんで亡くし、息子3人を育てるシングルファーザーに。三男は当時まだ2歳。それまで仕事ばかりで家は妻に任せきりだったが、1人で仕事と家事、育児を担うことになった。
 「子どもと向き合いたい」と、28年勤めた会社を退職し、「専業主夫」に。「自分たちの生き方が必ず世の中の役に立つ」と14年に勉強会を設立し、講演のほか、自身も苦労した料理、裁縫を教える講座を開く。
 父子家庭といっても、死別や離別、子どもの年齢など、置かれている状況はさまざま。15年度国勢調査時点での京都市の母子世帯数は9451世帯。これに対し父子世帯数は775世帯と、母子世帯の1割に満たない。
 一般に父子家庭は、経済的困難よりも家事など生活上の困難が多いとされる。しかし、仕事と家庭の両立に悩み離職や転職を余儀なくされ、収入面の不安を抱える人も少なくない。
 児童扶養手当の父子家庭への拡充、一人親家庭の就業支援に取り組む企業の表彰、働き方改革による長時間労働の抑制など、行政の支援や就労環境は徐々に整いつつある。
 ただ、「一人親家庭の親が仕事を続けるには、職場の理解が不可欠」と木本さん。さらに、女性が子育てに中心的に関わるのが前提の社会において、父親の多くは地域や学校、他の保護者とのつながりが薄いという面で、父子家庭の子育て環境は厳しいという課題もある。
 一人親家庭の問題を研究する京都華頂大の流石智子教授は「『男は弱音を吐いてはいけない』という男性ならではの価値観から悩みを相談できず、周囲から孤立することもある」と指摘する。その上で「家庭ごとに個別の事情があり、それぞれに必要な支援を見極めて、行政機関などとつなぐ体制づくりが必要」と訴える。
 木本さんは「将来的には父子家庭の父親同士が悩みを語り合い、互いにケアできる場をつくりたい」という。会の代表として、また当事者の一人として、見過ごされがちな父子家庭に光を当て、その暮らしを支える存在でありたいと考えている。
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 「京都いえのこと勉強会」は、設立5周年記念フォーラムを2月8日午後1時半から、左京区の府立京都学・歴彩館で開く。同会の5年間の歩みを紹介し、木本さんら当事者や支援団体の関係者らによるパネル討論も予定。先着80人。無料。申し込みは同会ホームページ。