鴨川にかかる五条大橋を下から見上げると、古びた水道管が見える。明治時代に東本願寺(京都市下京区)が防火のために琵琶湖疏水から水を引いた「本願寺水道」の一部である▼総延長4・6キロ。当時の京都府年間予算の4分の1に相当する巨費と、延べ26万の人員を投じて整備された。同寺は江戸時代に4度、焼失の憂き目にあっている。当時の人々がどれほど防火に心を砕いたかを物語る歴史遺産である▼26日は「文化財防火デー」。昨年は4月にパリで世界遺産のノートルダム寺院が炎に包まれ、10月には沖縄の首里城が無残に焼け落ちた。防火システムが発達した今日でも、火魔が文化財の最大の敵であることを思い知らされた▼「フランスの心が燃えている」「沖縄の象徴が燃えてしまった」。当時、現地の人々の嘆きが本紙に掲載された。文化財は歴史的、美術的な価値があるだけでなく、人々の心のより所でもある▼都道府県別で重要文化財の件数を見ると、建造物では京都府が全国1位、滋賀県は3位。美術工芸品は京都府が2位、滋賀県は4位を誇る。文化財を守り継ぐ上で京滋は他府県より重い責任を負っている▼今日は各地で防火訓練が行われる。先人が心血を注いで守ってきた遺産を後世に引き継ぐため、いま一度備えを新たにしたい。