火災などの災害から文化財を守り、国民の愛護意識を高める目的で「文化財防火デー」が制定されてから、きょうで65年になる。

 71年前の1月26日、奈良県斑鳩町の法隆寺金堂から出火し、国宝の壁画の大半を焼損した。世界的傑作と評された仏教壁画を失った衝撃は大きく、火災翌年の1950年に文化財保護法、55年には防火デーが制定されるきっかけになった。

 だが、貴重な文化財や歴史的建造物の火災は、その後もたびたび発生している。昨年には10月に沖縄県の首里城が焼失し、海外でもフランス・パリの世界遺産、ノートルダム寺院で4月に大火災が起きた。

 防火デーを機に、防災対策に不備がないかをいま一度点検、検証する必要がある。

 首里城の火災は、後の調査で配線に複数のショート痕が見つかり、電気系統からの出火が有力視されている。火のまわりが早かったのは、木造だったことが一因とみられている。

 ノートルダム寺院の火災を受けて文化庁が行った緊急調査によると、日本国内の国宝や世界遺産の9割以上が木造か一部木造だった。歴史的建造物は火災の潜在的な危険性が高いと認識する必要があろう。

 初期消火に有効とされるスプリンクラーがなかったことも、首里城の焼失につながったと指摘されている。

 消防法は建物の用途や面積などを基準にスプリンクラー設置を義務づけているが、出火元とされる首里城の正殿は該当していなかった。

 誤作動すれば貴重な建物や所蔵品を傷める恐れもあり、スプリンクラーの設置は判断が分かれるところだろう。

 ただ、文化庁の調査では、世界遺産と国宝の所有者の1割近く、重要文化財では約4割が、火災など夜間の緊急事態に対応できる人数が「2人未満」と回答した。

 高齢化や後継者難など人手不足を背景に、緊急時の対応をどう充実させるかは喫緊の課題と言える。

 文化庁は、首里城などの火災を踏まえて昨年末に「世界遺産・国宝等における防火対策5カ年計画」を策定した。

 消防法令に基づく対応に加え、個別に総合的な防火対策を講じる必要があるとし、初期消火対策の強化を挙げている。

 人手不足を設備で補うことも重要だろう。文化財所有者の意見を聞きながら、丁寧に対策を進めてほしい。

 2018年に文化財保護法が改正され、「保護」を優先してきた文化財行政は「活用」も促す新たな局面に入った。社寺をイベント会場として使うなど、文化財を生かした観光振興策が各地で進んでいる。

 こうした活用の事業を通し、国や自治体は、文化財保護や防災にも関心を持つ人材育成に取り組む必要がある。

 歴史や文化を伝える文化財は国宝や重要文化財、世界遺産だけではない。各地域にも豊かな文化財が存在している。文化財への理解を高めることも、防災の重要な要素ではないか。