南座で上演中の「サクラヒメ」。従来の1階客席を取り外し、舞台と客席エリア全体で同時多発的にパフォーマンスが展開する(京都市東山区)

南座で上演中の「サクラヒメ」。従来の1階客席を取り外し、舞台と客席エリア全体で同時多発的にパフォーマンスが展開する(京都市東山区)

1階の観客は黒の羽織を着用。立ったまま好みの位置で劇を見ていると、演者が間近に入り交じる。観客が演者を触ることは禁止だが、演者から触れてくることがある

1階の観客は黒の羽織を着用。立ったまま好みの位置で劇を見ていると、演者が間近に入り交じる。観客が演者を触ることは禁止だが、演者から触れてくることがある

1階後方で観客に交じりストリートダンスをする演者(右下の2人)

1階後方で観客に交じりストリートダンスをする演者(右下の2人)

 赤い欄干や提灯(ちょうちん)が「千と千尋の神隠し」の湯屋のような雰囲気と言えば大げさだが、いつにも増して異世界感を醸す。南座(京都市東山区)で上演中の「サクラヒメ」(2月4日まで)。従来の1階客席を取り外し、舞台と客席エリア全体で、同時多発的にパフォーマンスを繰り広げる。舞台と向き合う従来の演劇と異なり、劇場内のさまざまな所に観客の視線が乱れ飛び、南座を丸ごと使った不思議な劇空間となっている。=敬称略

 1階の観客には座席がない。立ったまま好みの位置に回遊し、時に入り交じる演者の演技を間近で体感できる。ニューヨークで話題を呼んだイマーシブシアター(没入型演劇)と呼ばれる形。南座は一昨年の新開場を機に、舞台と1階客席エリアを体育館のフロアのように「フラット化」できるようにした。今回は、フラット化初の演劇として、国内大劇場で初の「没入型―」を企画した。
 「サクラヒメ」は、鶴屋南北の歌舞伎「桜姫東(あずま)文章」を原案にした新作ショー。心中後に転生して花魁(おいらん)となったサクラヒメ(元宝塚の純矢ちとせ)が前世の記憶を頼りに運命の相手を探し出す。陰陽師(おんみょうじ)や浪人など5人の男性と出会うが…。
 1階の観客は、登場人物と同じ空間を行き交う「都人(みやこびと)」として、事前に貸し出される黒の羽織を着る。出演者が招き込むと、何人かの観客が遊郭風のセットに上がって、お茶屋遊びのようなことをしたり、フロアで一緒に刀を振ったりする場面もある。そうした光景が同時多発的に各所で続き、見る位置によって、受ける印象が違っている。
 通常通りの座席がある2~3階席の観客は「雲上人(うんじょうびと)」として見守る。終盤には5人の男の誰がヒメにふさわしいか、5色の好みの色の紙を観客が掲げて投票し、結末を選ぶ。
 5人の男性役は、EXILEの世界、MAG!C☆PRINCEの平野泰新ら若者に人気のパフォーマーが得意のダンスなどを披露する。それぞれのファンには大好きな演者「推し」を目の前で見られる希少な機会。宝塚仕込みの純矢の歌やダンスも、引き込まれる世界を作る。