<このクソッタレ>と悪態をついたり<気が滅入(めい)っちまって>と愚痴ったり。16歳の少年が揺れ動く思春期の視点で大人社会の欺瞞(ぎまん)をえぐる▼米国の小説「ライ麦畑でつかまえて」は1951年に出版されると若者の圧倒的な支持を得て、現在も世界中で読み継がれる。作者のJ・D・サリンジャー氏が亡くなってきょうで10年になる▼同氏は「ライ麦畑」で名声を博した後、田舎に移り住む。取材やインタビューに応じず、独自調査に基づく伝記には出版差し止めを求め訴訟を起こすなど私生活は「謎」だった▼謎といえば首相主催の「桜を見る会」をはじめ、わが国の政府も負けていない。その一つに先日あった大学入試センター試験の後継となる大学入学共通テストを巡る混乱も入るのではないか▼英語民間検定試験と国数記述問題の導入を検討した会議は当初非公開で、疑問の声も聞かず進め方は謎だらけ。文部科学相の失言からばたばたと見送られたが、ネットでの批判や文科省前の抗議と若者の行動が大きな役割を果たした▼「ライ麦畑」の訳者、野崎孝さんは同書で大人社会が夢を阻み圧殺する力が強いほど子どもの「粉砕しようとする反発力は激化してゆく」と書いた。入試改革の仕切り直しの議論。若者も納得できるよう公明正大にと願いたい。