買い物を終え、城陽さんさんバスに乗り込む市民ら(京都府城陽市富野、アル・プラザ城陽)

買い物を終え、城陽さんさんバスに乗り込む市民ら(京都府城陽市富野、アル・プラザ城陽)

 京都府城陽市内の住宅地の狭い道路を縫うように小型バス(座席数10)が走り、乗客を次々と乗せる。大型商業施設「アル・プラザ城陽」で降りた女性(79)は「週2~3回乗っている。年を取ると欠かせない存在です」と笑顔を見せた。

 今年の10月で運行25年を迎える「城陽さんさんバス」。市が京都京阪バス(八幡市)に経費を補助するコミュニティーバスだ。市内を反時計回りに走る片道45分の路線と、市東部の住宅地やJR城陽駅、近鉄寺田駅を結ぶ片道25分の路線があり、1年に計約21万9千人(2018年度)が利用する。
 コミバスとしては早期の1995年10月に運行を始めたが、当初の10年間は乗客数が年約4万人~5万人と想定を大幅に下回った。
 60年代から京都や大阪のベッドタウンとして開発が進んだ城陽市。公共交通の南北軸はJRと近鉄があるが、東西を結ぶ民間バス路線は市の大部分で「空白」だった。「東西の道路は狭く、大型バスが曲がれなかった。小型バスも乗客数が限られ、自力での黒字は困難とみていた」と京都京阪バスの槻木章管理部長(62)は事情を語る。
 一方、城陽駅東側は坂に住宅地が広がり、90年代、忍び寄る高齢化に不安を覚えた一部住民がバス運行を求める声を上げた。94年に駅前が整備された城陽駅にバス路線を引きたい行政の思惑も合わさり、市が京都京阪バスの前身会社に打診し、運行が始まった。
 しかし、まだ車を運転できる住民が多く、市も「バス運行の素人で、市民ニーズに合う路線やダイヤの設定をできなかった」。路線変更など試行錯誤したが、低迷は続いた。
 バスに税金を投入し続けるか否か―。市が03年に2千人規模の市民アンケートを実施すると、存続を求める声が多数上がった。今後は高齢化も大幅に進む。市は「考えられ得る全ての増客策」を導入し、05年から仕切り直しを図った。
 アンケート結果も踏まえ、各バス停を毎時定刻に出発するパターンダイヤの導入▽城陽駅で快速電車とスムーズに乗り継げるダイヤ設定▽150円の均一運賃へ変更▽バス停の増設―を実施した。13年から「アル・プラザ城陽」にもバスを接続すると、全体利用者数が前年比約1・5倍に増えた。05年度以降、バス会社はほぼ毎年黒字が出るようになった。
 そもそも市は最初の10年間、運行の赤字補てん補助金を1~2年目に限るという一括契約をバス会社と結んでいた。3年目以降は乗客増を見込んだためだが、予想が外れた。バス会社に運行を継続してもらうため、契約を改める必要が生じた。
 5%の適正利潤を加えた毎年度の運行経費の3分の2を市が補助する一方、バス会社は残りを負担し、運賃と広告から得た収入を負担解消に充てる。両収入の合計が3分の1を超えると黒字が増え、市はその分、補助金を減らす仕組みにした。
 年間5千万円前後の補助金額をどうとらえるか。市の立木克也都市政策課長は「市民の健康維持など見えない効果もある。市内で年間20万人が利用する公共施設はそうはない」と強調する。城陽市の高齢化率は33・2%(18年度)で山城地域の5市で最も高い。団塊の世代全員が75歳以上になる25年に向け、バスの需要は一層高まる。
 バス会社は近年、労働時間の長さや年間所得の低さなど構造的課題による運転手不足に悩まされている。京都京阪バスも12年度の194人から19年末は140人まで減った。比較的待遇のいい京都市バスなどへの流出も続いている。
 昨年4月は始発を遅くして終発を早め、12月には土曜・休日の大型減便に踏み切った。「13年に同市の3地域で路線撤退した際は赤字解消が理由だったが、今はそれ以前の問題だ」と槻木管理部長の表情は厳しい。
 城陽さんさんバスは運転手不足の影響による人件費増で、全体の運行経費が上昇傾向だ。市議会で「補助金はこのまま上がるのか」との指摘もあり、17年度から上限が5300万円に設定された。同社は「運転手不足が加速すれば、上限変更をお願いすることはあり得る」とする。
 全国の一般路線バスの廃止距離は、17年度までの10年間で計約1万3千キロ。北海道から鹿児島県まで3往復半できる距離にあたる。
 公共交通に詳しい土居靖範・立命館大名誉教授(76)=城陽市在住=は「移動の自由を保障する交通権が住民生活のあらゆる土台だと認識すべき時代になった」と指摘。「自治体は住民参画のもと、公共交通のあり方を絶えず検証する必要がある。国も交通労働者の条件改善に力を入れるべきだ」と語る。