住宅街を走る自治会運営の路線バス「レインボウバス」(宇治市明星町)

住宅街を走る自治会運営の路線バス「レインボウバス」(宇治市明星町)

買い物に行く送迎サービス利用者に声を掛ける加賀爪さん(左)=久御山町森・イオンモール久御山

買い物に行く送迎サービス利用者に声を掛ける加賀爪さん(左)=久御山町森・イオンモール久御山

 一戸建てが立ち並ぶ京都府宇治市明星町の住宅街を町自治会運営の路線バス「明星レインボウバス」が、高齢者や親子連れを乗せて走る。京都京阪バスが、町内を走る路線を休止してから約6年間、「乗ることが残すこと」を合言葉に守り続けてきた。「住民がひとつになって、バスを走らせている。その一体感に誇らしい気持ちになる」。同町自治会の森本重和さん(73)は語る。
 三室戸寺近くの高台にある明星町は、高齢化率約34%(2019年10月現在)。徒歩圏内に商業施設や病院がなく、高齢者らにとって、地域の公共交通は欠かせない。だが乗客数減を理由に路線バスが見直され、12年度末で休止が決定。住民の意向で翌年度は「実証実験」というかたちで、市が存続させた。
 明星町自治会は14年度、市の補助事業を使って京都京阪バスに委託する試験運行をして、15年度から本格的に路線バスの運行主体となった。同町を発着点に、京阪やJRの宇治駅などを通り、市役所や市文化センターに向かう。運賃は一律210円。1日往復23便で、1日平均120人ほどが利用する。
 収支の不足分の半額を市が、残りを自治会が払い、赤字が減ると自治会の負担はより少なくなる仕組み。運行経費に占める運賃収入は67~70%で推移し、町内の約820世帯が月200円ずつ払っている計算だ。
 明星町の自治会加入率は約9割を占める。森本さんは「不平等感が少なく、自分たちがバスを動かしているという意識が住民に根付いている」とし、自治会役員を過去に務めた中田のぞみさん(57)は「バスの維持は将来への投資と住民が考えている」と話す。
 バス運営の課題は月1回ほど、森本さんが副委員長を務める自治会の委員会で議論される。「同じメンバーで話し合うことで運営方針が一貫し、事業がテンポ良く進む」(中田さん)という。
 昨年8月には、運行開始後、初の路線改定を行った。高齢者施設や三室戸小近くの道を新たにルートに加え、バス停を3カ所増やして17とした。
 マイカーを持つ若い世代が移り住み、路線バスへの関心が薄い住民もじわりと増える。路線存続に向けた意識の共有が今後の課題になってきそうだ。
 住民の支え合いで移動手段を確保する取り組みは各地で、さまざまな方法で進む。久御山町社会福祉協議会は、交通手段が乏しい高齢者向けの買い物送迎サービスを17年9月からボランティア主体で続けている。
 送迎サービスは第2金曜の午後、高齢者宅と高齢者宅と大規模商業施設「イオンモール久御山」(京都府久御山町森)を結ぶ。料金は1回100円。路線バスが通らない町西部の御牧地区の高齢者を中心に、約30人が利用登録する。ボランティアが送迎と買い物に付き添う。
 12月は12人が利用し、イオンモールでは約1時間半、調味料や冷凍食品、衣服など、思い思いに買い物を済ませた。毎回使うという男性(89)=同町島田=は「重たい荷物を玄関まで運んでくれ助かる」と喜ぶ。ボランティアの加賀爪弘美さん(79)=同町市田=は「負担感はほぼない。友だち感覚で活動を楽しんでいる」と話すが、「いずれ担い手にも限界が来る。町や高齢者施設の支えが必要になる」と危惧(きぐ)する。
 人口減少で身近な公共交通の利用者が減り、交通事業者は不採算路線の見直しを加速させている。住民の暮らしを支える自治体も、財政難に直面する。移動の足を住民たち自身が支えざるを得ない状況が各地で生じている。 
 日常生活に不可欠な交通手段の確保を定めた交通政策基本法(13年施行)は自治体、交通事業者、国民に、積極的な役割を果たすよう求めている。「地域交通の維持は本来、行政の役割」(森本さん)という考えがあれば、「住民が互いに助け合う地域は元気で活発な町の証拠。無理なく笑顔で活動できる間は、続けたい」(加賀爪さん)という思いもある。それぞれの立場の知恵と経験と力を生かしながら、地域の実情に合わせて、持続可能な住民の移動手段を保障する仕組みづくりが欠かせない。