JR桂川駅方面と結ぶ特西4系統の市バスは1時間に1本。「せめて2本にならないか」と願う藤本さん(京都市西京区・南福西町バス停)

JR桂川駅方面と結ぶ特西4系統の市バスは1時間に1本。「せめて2本にならないか」と願う藤本さん(京都市西京区・南福西町バス停)

 2月2日投開票の京都市長選では、西京区の洛西ニュータウンへの新交通整備を3候補ともに訴えている。都市開発の前提だった市営地下鉄東西線の延伸は、財政難で40年以上たっても実現していない一方、65歳以上の住民は4割を超え、人口は減少。スーパー撤退も相次ぎ、市立芸術大も転出する予定だ。地域が抱える課題は「交通」の枠を超え、複雑、多様化している。

 「通勤、通学に便利でなければ新住民は来ない。すべての課題は交通につながる」。1978年からニュータウンで暮らし、市バス路線充実に向け活動している藤本廣志さん(71)は論戦を歓迎しつつ、「まずは、すぐできることをやってほしい」と話した。
 藤本さんが会長を務める福西学区自治連合会は2013年から毎年、バス路線について住民アンケートを実施。08年に開業したJR桂川駅方面との接続を望む声が増え、住民らは市交通局と交渉を重ね、14年、新路線が実現した。拡充したもののまだ2系統(1日約70本)で、以前からある阪急桂駅方面行きの7系統(1日300本以上)と比べ偏りがある。地域内での移動ニーズも高いが、ニュータウン内を循環するのは1系統のみ。
 少子化も進み、かつて1700人いた福西小の児童数は200人台となった。西陵中と隣の学区の竹の里小とを統合し、25年に小中一貫校化する議論も始まっている。「子どもを一貫校に通わせたい人に来てもらうためにも、利便性を高めたい」。危機感は強い。
 交通手段が充実しても移り住む人が増えるかは分からない。ニュータウンの5階建て市営住宅の大半はエレベーターがなく2割は空き状態。戸建ては1区画が大きく価格は高め。各学区の会館のトイレは6割が和式。まちができた40年前と現代のニーズがずれ、住民から不満も漏れる。

■「利便性以外の魅力生かせ」 伏見から移住の男性

 2009年に伏見区から移り住んだウェブデザイナーの張本将利さん(37)は、不便とは感じない。「歩道が広く、学校や公園に車道を通らず行ける街なんてほかにない」。13年にNPO法人らくさいライフスタイルへ加わり、地域を盛り上げるイベントやツアーを企画してきた。規制や資金の壁で企画を断念することも多く「広い路上を生かしたイベントなど『まちづくりの新たな発想を試せる実証実験の街』となれば人が自然と集う」と考える。
 出身は、若者の移住先として人気の高い長崎県の福江島。約3万人がコンパクトに暮らす故郷は、洛西ニュータウンとどこか似ていると感じるが、洛西は大都市の中にあるという大きな違いがある。「田舎への移住は理想と現実のギャップで失敗する人も多い。その点、洛西はハードルの低い移住先としてうってつけ」。街の将来を思うと、アイデアは尽きない。候補が語る公約を否定はしないが「交通の便利さ以外で『京都で1番』を目指せるはず」。視点を変えた論戦に期待している。

【洛西ニュータウンへの新交通に関する3候補の公約】

門川大作候補 地下鉄東西線と洛西ニュータウン、長岡京市を結ぶ環状線構想を新交通システムで実現
村山祥栄候補 JR桂川駅と洛西ニュータウンに専用レーンを設けて高速バスを走らせる「BRT」導入
福山和人候補 JR桂川駅と洛西ニュータウンをつなぐLRT(次世代型路面電車)を導入

≪洛西ニュータウン≫

 丘陵の竹林261ヘクタールを開発し、1975年から分譲開始。福西、境谷、新林、竹の里の4学区で構成し、各学区にスーパーや会館を核とするサブセンターを設けた。人口は80年代後半には3万6千人に達したが、現在は約2万2千人。当初3%台だった高齢化率は、2019年10月時点で41.7%。地下鉄東西線の洛西延伸はかつての市基本計画に盛り込まれていたが、2800億~3千億円かかるとされ、10年策定の現基本計画では消えた。

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 2月2日投開票の京都市長選へ、身近な市政課題を随時取り上げていきます。