「幽霊列車」を出版した笹田さん。高校生の時に制服姿で近畿一円を巡り、廃車を記録し続けた(滋賀県甲賀市水口町南林口)

「幽霊列車」を出版した笹田さん。高校生の時に制服姿で近畿一円を巡り、廃車を記録し続けた(滋賀県甲賀市水口町南林口)

解体のため福知山方面から吹田信号場に回送される車両(1989年撮影)=「幽霊列車-日本と世界の廃車図鑑」から

解体のため福知山方面から吹田信号場に回送される車両(1989年撮影)=「幽霊列車-日本と世界の廃車図鑑」から

 滋賀県甲賀市水口町の医師笹田昌宏さん(48)が「幽霊列車―日本と世界の廃車図鑑」を出版した。国鉄分割民営化の舞台裏で役目を終え、姿を消した車両を追った珍しい鉄道本で「昭和を駆け抜けた廃車の魅力と歴史を伝えたい」という。

 高校生の時に鉄道の撮影を始めた笹田さんは当時、時刻表にない車両が暗闇の中をひそかに回送されているのに気づき、「幽霊」のような廃車に興味をもった。大量の車両が疎開留置されていた米原駅や福知山駅、中継地点の吹田信号場、解体現場の神戸港駅など近畿一円を奔走し、その姿を記録した。
 同著では、さまざまな型式の廃車の写真とデータを掲載し、輸送・整備計画といった内部資料と併せて解体までの舞台裏を紹介している。後半は1988年に西舞鶴駅で撮影した戦災復旧車「スエ71 41」など思い出の廃車を特集。第2次世界大戦末期に空襲で一部焼失し、終戦後は救援車に改造されて使命を終えたが、「車体はボコボコ。遠くなる戦争の記憶を呼び戻す車両だった」という。
 他に欧米とアジア各国で撮り歩いた廃車や、多賀町で野外展示中の蒸気機関車など国内で今も見られる幽霊列車の写真を載せた。
 鉄道関連の出版は17冊目となる笹田さんは「いつか商業出版をしたいと30年間温めていたものがようやく日の目を見て感慨深い。廃車には『わびさび』の味わいがあり、懐かしさや郷愁を感じる人もいるのでは」と話す。A5判、192ページ。1870円。イカロス出版。