ダチョウ(オーストリッチ)が世界を救う-。感染症などを引き起こすさまざまなウイルスや細菌に対するダチョウ由来の抗体を作り、各種メーカーに供給している京都府立大発のバイオベンチャーだ。
同大学教授との二足のわらじを履く塚本康浩社長が地球上で一番大きな鳥に着目したのは、獣医師として神戸市のダチョウ牧場を診察で訪れたことがきっかけだった。行動学の研究で通い詰めるうち、ダチョウが病気やけがに強く、60年ほど生きる「秘密」に関心を抱いた。
その鍵を握る抗体は、生体内でウイルスなどの抗原と結合して本来の機能を不活性化させる物質。親鳥に抗原を注射すると、産んだ卵に抗体が移る仕組みを利用し、卵黄から抗体を精製する。ダチョウ由来の抗体は熱や酸、アルカリに強いなど品質が安定しており、巨大な卵からは低コストで大量に抽出できる。「大学の研究成果を社会に還元して経済効果が出れば」と起業を決心した。
ほどなく鳥インフルエンザや新型インフルの感染拡大を受け、ウイルス抗体をしみ込ませた防御用マスクがヒットした。これから流行する感染症などはある程度予測可能で、抗体を備蓄しているという。アトピーやニキビが悪化する一因とされる黄色ブドウ球菌の毒素を抑える抗体を配合した化粧品なども開発。「奇病ではなく、身近な病気に役立てたい」との思いから、糖尿病や食中毒、がんと、扱うテーマは幅広い。
現在は兵庫県内でダチョウ約500羽を飼育。産んだ卵は京都府立大精華キャンパスの研究拠点施設に運び、遠心分離機などを使って抗体を抽出している。感染実験はインドネシアの施設で行っている。海外進出に向け、8月から市場調査を兼ねた販売をシンガポールやフィリピンで開始した。狙うのは成長著しいアジアの富裕層たちだ。「ダチョウ抗体を用いて、多くの人々の健康を助ける商品をつくっていきたい」と塚本社長。京都から世界へ羽ばたこうとしている。
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