ミャンマー国軍によるイスラム系少数民族ロヒンギャ迫害で、国際司法裁判所(ICJ)は迫害を防ぐ「あらゆる措置」を至急取るようミャンマー政府に命じた。

 ミャンマーは国際社会の要請に応え、深刻な人道危機の解消に向き合うべきだ。政権を率いるアウン・サン・スー・チー国家顧問の指導力が問われよう。

 57カ国が加盟するイスラム協力機構(OIC)を代表して、アフリカのガンビアが、ロヒンギャ迫害はジェノサイド(民族大量虐殺)条約違反だとして提訴した。

 大量虐殺か否かの結論まで数年かかるとみられ、ICJは先行して、ミャンマー国内にとどまる約60万人に対する「重大なリスク」を指摘。国軍や民兵に大量虐殺を招きかねない行為を禁じるよう求め、定期的に迫害防止策を報告するよう命じた。ミャンマーは「留意する」と表明したが、救済につながるかは見通せない。

 国連の報告書によると、国軍とロヒンギャ武装集団が衝突した2017年8月以降、約74万人が隣国バングラデシュに逃れた。軍の「除去作戦」と呼ばれた大規模な迫害でロヒンギャ村落の4割以上が破壊され、1万人以上が犠牲になったとみられる。

 ICJに出廷したスー・チー氏は、軍の行き過ぎた行為を認めつつ、条約違反は否定した。

 ミャンマーは約9割が仏教徒でイスラム教徒への差別感情が根強い。「迫害」を非難する国際世論への不満は大きく、来年秋の総選挙に向けた人気挽回の思惑が透ける。なお隠然と実権を保つ国軍との微妙な関係もあろう。

 とはいえ軍の暴挙を正当化し、少数者を抑圧する姿勢はノーベル平和賞受賞者にそぐわない。民主化運動で人権を掲げた指導者であるなら実態を直視し、問題解決へ一歩踏み出してもらいたい。

 難民の帰還は一向に進まず、多くは劣悪な暮らしを強いられたままだ。ミャンマーがロヒンギャを自国民族と認めず、国籍さえ与えないため、帰還後に再び迫害を受ける恐れがあるからだ。難民が安心して故郷に戻れる環境を整える必要がある。

 日本政府はミャンマーの主張に一定の理解を示し友好関係を維持するが、人権より経済的な利益追求を優先との批判がつきまとう。経済支援だけでなく、積極的に難民の帰還を促す取り組みが欠かせない。国際社会と連携し、ロヒンギャに国籍を認め、諸権利を与えるよう働き掛けてもらいたい。