京都市在住の中国人留学生から新型コロナウイルスが検出された。京都では初めての感染確認になる。

 感染が広がりを見せる中、想定されなかった事態ではない。ここは冷静に行動することが大切だ。

 京都府と京都市によると、留学生は20代女性で、帰省先の中国・武漢市から1月22日に京都に戻り、23日にせき、28日に38度の高熱が出て京都市内の病院に救急搬送された。画像診断で肺炎ではない、とされた。

 女性は帰国後、マスクを着用、ほとんど外出しないで、人との接触を避けていたそうだ。府・市は30日時点で「濃厚接触者は確認していない」といい、過度に恐れる状況ではないだろう。

 専門の医師によれば、現状の感染力はインフルエンザと同じ程度で、せきやくしゃみなどの飛まつ感染や接触感染に注意することが肝要という。しっかりとマスクを着用し、丁寧に手洗いするよう心がけたい。

 もう一つ、気を付けたいことがある。インターネット上の根拠のないデマや流言に惑わされない、真偽不明の情報を安易に拡散しないことだ。

 今回の新型肺炎でも、「発熱症状の客が関空から逃げた」とのデマがネットで一時広がった。デマや流言によって、対策業務に支障をきたすことがある。誤解や偏見、差別を助長し、人権を踏みにじる事例が最近でもみられる。

 政府や自治体は感染防止対策だけでなく、デマや流言を社会的リスクととらえ、対策の柱の一つに据える必要があるのではないか。

 流言の量は、重要さと曖昧さの積に比例すると専門家が指摘している。情報が少なく、曖昧な状況の中で、デマや流言は大きくなっていくというわけだ。

 感染者の行動経路をどこまで公表するか、大阪府と奈良県で対応が分かれた。感染者の人権を守りつつ、できるだけ曖昧さを減らしたい。市民が冷静に判断し行動するためには、適切な情報が必要だ。

 きのう世界保健機関(WHO)が、新型ウイルスの広がりを「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と遅まきながら宣言した。感染拡大防止に国際的な協力を求め、各国間の情報共有に注力するとしている。

 しかし、すでに真偽不明の情報は国境を超えて出回っている。それを抑えられるのは、正確な情報発信だ。政府や自治体だけでなく、市民も取り組む必要がある。