甘さの中にもスパイスを効かせた「ガネーシャ」。木型は北海道の職人に特注したという

甘さの中にもスパイスを効かせた「ガネーシャ」。木型は北海道の職人に特注したという

300年続く家業の伝統を守りつつ、新風を吹き込む金澤倫子さん(京都市下京区)

300年続く家業の伝統を守りつつ、新風を吹き込む金澤倫子さん(京都市下京区)

 京都市下京区で300年続く京菓子店の後継者として、インド舞踊家の女性が活躍している。インド料理になじみ深い香辛料を干菓子に加えるなど個性豊かな製品を考案し、老舗に新たな歴史を刻んでいる。

 若狭屋久茂(下京区四条通大宮東入ル)は江戸時代中期の1716年創業。7代目の金澤良治さん(88)と、8代目を継ぐ長女の倫子さん(51)が2人で切り盛りしている。

 倫子さんは30代前半のころ趣味で始めたインド舞踊に夢中になり、2011~12年にはインド政府の奨学金を得て南インドのチェンナイに留学。帰国後はインド舞踊家として公演に参加したりカルチャーセンターで教えたりする一方、3年ほど前からは高齢になった良治さんに代わって店の中心を担う。

 材料費の高騰や消費低迷などで経営は厳しいなか、倫子さんは若い人にも喜ばれそうな商品の考案に励む。良治さんが力を入れてきた和三盆の干菓子の味を受け継ぎつつ個性を出そうと、昨年11月には香辛料のフェンネルやコショウの入った干菓子を作った。

 和三盆の甘みがミルクに似ていたことから、「チャイ(インドのミルクティー)のようにスパイスが合うかもしれない」と考えたのがきっかけだったという。舌で滑らかに溶ける和三盆になじむよう香辛料を細かくつぶすなど工夫を重ね、インドで知恵と成功の神とされる「ガネーシャ」の名前を付けた。干菓子に欠かせない木型も、自らデザインした図案を基に北海道の職人に製作を依頼。愛らしい形と、甘さの中にも少しピリリとした辛みを感じられるオリジナルの干菓子が完成した。

 現在はココナツ入りの干菓子を試作するなど、世代を超えて喜ばれる和菓子を作りたいといい、倫子さんは「昔から受け継がれてきた和菓子、父が苦労して確立させた干菓子の味を責任をもって引き継げるよう精進し続けたい」と話す。