東京電力福島第1原発の処理水の処分方法などを議論する政府小委員会が提言をまとめた。

 前例のある海洋と大気への放出を「現実的な選択肢」とし、うち放射性物質監視などの面から「海洋放出の方が確実に実施できる」と強調した。

 一方で処分開始の時期などには踏み込まず、政府に判断を委ねた。放出による風評被害の大きさも明記した。

 海洋放出に対する漁業者らの反発は根強い。全国漁業協同組合連合会は「海洋放出には絶対反対」の立場を崩していない。

 小委の結論をもって拙速に処分を進めれば、地元や漁業者の反発は避けられない。最終判断までに地元としっかり議論することが何より求められる。

 処理水に含まれる放射性物質トリチウムは通常の原発でも発生しており、濃度や量の上限を決めて海に放出している。

 福島第1原発について東電は「トリチウム以外は除去できている」と主張したが、約8割に放出基準を超える他の放射性物質も含まれていることが分かった。

 事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)によって汚染された処理水はたまり続けている。東電は2022年夏ごろに保管タンクの容量が満杯になると試算する。

 だが、他の原発と同じように考えることはできない。

 今夏には東京五輪・パラリンピックが控える。政府は「復興」をアピールしたい考えだが、処理水問題の進め方を誤れば風評被害をさらに広げかねない。

 地元では本格的な漁業の再開に期待が高まっている。福島県沖で出荷制限されている魚種は最大44に上ったが、順次解除され、残り1種となった。

 それでも風評被害は解消に至っておらず、多くの国で輸入規制が続いている。沿岸漁業を担う3漁協の水揚げ量は事故前の2割以下にとどまるという。

 この状況で安易な判断は許されないだろう。

 小委も、風評被害に上乗せされる形でさらに経済的影響が出る恐れが極めて高いと指摘する。

 分析体制の構築など対策強化とともに、最終判断に至るまでの過程の透明化は不可欠だ。

 昨年9月、退任直前の原田義昭前環境相が「海洋放出しかない」と発言し、放出への地ならしだと批判を招いた。

 海洋放出ありき、開始時期ありきで押しまくるようなことはあってはならない。