暖冬の今年は季節の巡りが早い。京都市左京区の府立植物園では、春の訪れを告げるセツブンソウやフクジュソウの花が例年より2週間ほど早く咲き始めたという▼立春の空気を感じつつ訪ねると、台所俳句の杉田久女が<ほろ苦き恋の味なり蕗(ふき)の薹(とう)>と詠んだフキノトウもぽつぽつと顔をみせていた。てんぷらやあえ物になり、独特の香りとほろ苦さが早春を感じさせる日本の味である▼アイヌの民話に、神の妹が人間界を荒らした罪でフキノトウにされ、人々の平穏を祈る話がある。北方の厳しい冬を耐え、雪解けを待たずに真っ先に姿を見せる小さな花芽が神の化身となる。春を連れてくる使者として▼そういえば、春を待ちわびるように咲くフクジュソウの花の鮮やかな黄色に「神の色」を見たのもアイヌの人々だった。今は亡き作家の立松和平さんによると、心の底を射貫く強い目を「フクジュソウのような眼」と、アイヌの人たちは呼ぶそうだ▼フキノトウは地下茎でつながり、受粉後に花茎を伸ばし、種子を飛ばして繁殖する。今年はフキの葉が枯れずに残っており、これも暖冬の影響ではないかと、植物園はみている▼きょうから今季最強の寒気が日本列島を覆うが、6日を過ぎれば気温が上昇しそうという。今年は春の接近が早過ぎて、戸惑う。