首都圏で「『ふちょう』を取材していました」と自己紹介し、首をかしげられたことがある。音から「府庁」と連想しづらかったようだ。都道府県で「府」は、京都と大阪しかない▼大政奉還後、明治政府が軍事・政治的に重要な土地を「府」とした名残だとされているが、地方自治法上は府も県も道も、広域自治体としての性格は変わらない▼ただ、「都」は異なる。都の下にある特別区は、市町村よりも権限が少なく、固定資産税などの税収も直接入らない。人口と国の重要機関が集まる首都の権能は他の道府県より強い▼名は体を表す、と言いたいのだろうか。大阪都構想の実現を目指す松井一郎大阪市長が先月末、大阪府の名称を「大阪都」に変える意欲を示した。府県名の変更に必要な法整備を国に働きかけつつ、名称変更の是非を問う府民対象の住民投票を行うという▼都構想は2015年の住民投票で否決され、2度目の投票が11月にも予定されている。無駄を排除した効率的な都市運営は重要な課題だが、市民サービスの低下は許されない。器よりもまず、中身に意を尽くすべきだ▼東京への一極集中は加速している。地方にも変革が求められている。都構想の議論が街のあり方を見つめ直す契機になってほしい。名前は後からついてくるはずだ。