横浜港に入港したクルーズ船で乗客(香港で下船)の新型コロナウイルス感染が確認され、厚生労働省が乗客乗員約3700人に大規模な検疫を行う事態になった。

 これまでに陽性反応が出た10人が感染症法に基づき医療機関に搬送された。残りの乗客乗員は14日間、船内で待機になるという。

 異例ともいえる規模の「隔離」だ。乗客は日本、香港、台湾など56の国と地域に及ぶ。

 健康チェックは済んでいるが、検体検査の結果が判明した人は現時点ではわずかだ。自分が本当に感染していないか、不安な中での待機となろう。

 感染拡大を防止するため、一定期間の経過観察はやむを得ない。ただ、世間と隔絶された場所で長い時間を過ごすことに精神的、肉体的な負担を感じる人は少なくない。十分な配慮が欠かせない。

 船内に留め置かれる乗客の中からは、常用する持病の薬が切れるなど、長期間の「待機」を心配する声が出ているという。

 当事者の不安を和らげる方策が求められる。長期間の待機が健康を損ねることがないよう、医療面の支援が欠かせない。先の見通しを立てやすくするため、情報提供にも気を配ってほしい。

 発生地の中国・武漢市からは邦人らが政府のチャーター機で帰国しており、約500人が同様に首都圏のホテルなど4カ所の施設での滞在を余儀なくされている。

 部屋から出ないよう求められ、食事や生活用品も部屋の外に置かれ、ドアを開けて受け取るなど不自由な状態が続いているようだ。

 政府が当初に取った対応は十分とはいえなかった。帰国者のために宿泊施設を用意したが数が足りず、感染拡大が心配されているのに一部を相部屋にしたことに批判が高まった。

 新型肺炎はなお拡大しており、経過観察が必要な人は今後も増える可能性がある。政府は保有する施設の活用を検討しているが、数の確保だけで済む問題ではない。

 観察で症状がなかった人は自宅などに移る。ただ、日本に居住地がない人は新たな生活の場を確保しなくてはならなくなる。

 親とともに帰国した子どもは教育を受ける機会を失う可能性もある。学校での受け入れ策も含め、柔軟な対応を求めたい。

 政府は各都道府県に感染の疑いがある人を専門的に診察する機関の設置を求めた。経過観察となった人に対しても、相談や支援の態勢拡充が必要だ。