さながら秋の再選に向けた選挙演説ではなかったか。

 きのうのトランプ米大統領による一般教書演説だ。ウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判が続く米議会に立ち、大統領選で争うことになる民主党と対決する姿勢を鮮明にしたと言える。

 本来は国の現状を報告し、向こう1年の内政・外交の施政方針を表明する一般教書演説だが、主要テレビ局が生中継するとあって、いつも以上に政治ショーの色彩が強くなった印象だ。

 キャッチフレーズとなった「偉大な米国の復活」を誇示し、好調な経済実績をうたい上げる。特に雇用増加や失業率低下、賃金上昇を成果として繰り返し強調したのは、岩盤支持層だけでなく広く中間層受けを狙ってのことだろう。

 演説で列挙した医療改革、犯罪対策、教育支援などの政策は、選挙公約のように聞こえた。

 トランプ氏に限らず一般教書演説は内向きになりがちだが、米国大統領の外交政策は世界に影響を及ぼすだけに注目される。

 特に今年は中東政策だ。1月にイラン革命防衛隊の司令官殺害や中東和平案発表を矢継ぎ早に強行したことで、中東情勢が緊迫化している。

 トランプ氏は演説で、イランに対し「核保有を断念し、テロ行為をやめるべき」と改めて警告し、イスラエル寄りの姿勢を示した。しかし、中東地域安定化に向けたビジョンは聞けなかった。

 中国との関係では、貿易協議の「第1段階」合意を成果として胸を張った。メキシコ、カナダと結ぶ北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定とともに、海外に流出した工場が米国に戻ることにつながったというわけだ。

 新型コロナウイルスの感染防止対策で、中国と緊密に連携しているとも言っている。

 非核化交渉が行き詰まっている北朝鮮問題に言及がなかったのには、肩すかしの感がある。

 日本との関係についても触れなかった。ただ、「米国は他国の警察機関ではない」と演説で述べており、日本を含め同盟国に駐留経費の負担増をより強く求めてくる可能性がある。

 「米国は世界一の石油、天然ガスの生産国になった」と誇らしく語った。温室効果ガス排出2位の国だが、温暖化防止に取り組むパリ協定から離脱した大統領だ。

 自国第一主義を掲げる一方で、大国として世界に責任を果たそうとしない姿勢は、演説からもうかがえた。