暖かい日が多く、ありがたいようだが落ち着かない。北海道紋別市から、海氷が陸から見えた「流氷初日」の知らせがようやく届き、ほっとした▼流氷が押し寄せる知床半島の西側、斜里町に京都市出身の絵本作家あかしのぶこさん(49)は暮らしている。知床の動植物の生態を丹念に描き、昨年末には京で原画展を開いた▼厳しい吹雪の夜をやり過ごす動物と人を描いた絵本を開くと、画面から氷点下の突風と雪つぶてが吹き付けてくる気がする。森を歩いて調査や観察を重ね、2年以上もかけて1冊を仕上げると聞いて納得した▼知床も暖冬気味かと電話すると、「2月に入ってどっさり降りました。くねくねと曲がったり、交差するキタキツネの足跡を真っ白な雪原に見つけた」と声が弾んだ。恋の季節が到来し、メスとオスが追いかけっこした跡だという。生き物の気配が絶えるように感じる冬だが、春への準備はもう始まっているのだ▼海を閉ざす流氷は、アムール川が集めた大陸の栄養分を北海道沿岸まで運ぶ。流氷の下の水は、深く沈んで海を底からかきまぜる。それらが豊かな北の海を育んでいる▼外出がおっくうな寒い日は、家にこもって思い出深い絵本を開いてみるのもいい。ひとり静かに、深く物語に浸る。それも、春を迎える準備だろう。