関西財界セミナーの分科会会場に登場した「グレー・リノ(灰色のサイ)」のぬいぐるみ

関西財界セミナーの分科会会場に登場した「グレー・リノ(灰色のサイ)」のぬいぐるみ

 経営者の真剣な討議の場に、ちょこんと置かれたぬいぐるみ。名は「グレー・リノ(灰色のサイ)」という。

 草原に存在するサイは普段はおとなしいが、一度暴走すると手が付けられない。社会や経済に将来大きな影響を及ぼす存在なのに、軽視されている材料を例えた用語だ。米国の作家ミシェル・ワッカー氏が名付けた。
 このほど閉幕した関西財界セミナーの第6分科会は、ターゲットの社会課題を明確にし、その解決に動く若い起業家が多く参加した。少子高齢化や地球温暖化をはじめ、格差、教育問題など、暴走前の「灰色のサイ」に挑むメンバーでもある。
 これらのサイの「退治」に、現在の政治では推進力に乏しい。求められるのはビジネスの力であり、イノベーション(革新)を生み出す人材だろう。
 討議の中で同感したのは、答えを導くのではなく「問いを立てる力」の重要性。大阪ガスの行動観察研究所長を務める松波晴人・大阪大特任教授は「仮説構築能力」と表現し、イノベーションの本質部分だと説いた。
 「企業のみなさんに社会課題をビジネスチャンスと捉えてほしい」。こう訴えたのは、起業支援会社フェニクシー(京都市左京区)の橋寺由紀子社長。大企業の社員が事業創出を学ぶ合宿型施設を運営する彼女の元には、灰色のサイを見過ごせないと、多能な人材が集まってくる。
 来る2025年の大阪・関西万博は「従来のような自国、自社自慢では、もはや人は来ない」(黒田章裕コクヨ会長)。「いのち」がテーマの万博を盛り上げ、関西経済の発展につなげるには、社会課題を解決する「社会派ベンチャー」の力も欠かせない。
 「課題先進国」と言われ、ビジネスのタネには事欠かない日本。関西は学生やものづくり企業が比較的多く、産学連携も活発だ。生活や社会に潜むさまざまな問題の事業化をサポートする「課題発掘都市」を目指すのも、一つの方向性かもしれない。