京都地裁

京都地裁

 容疑者の勾留を裁判所が認めないケースが、全国的に少しずつ増えている。ここ10年で京都地裁が京都地検による容疑者の勾留請求を却下する傾向が上昇。全国の地裁でも同様の傾向がみられ、冤罪(えんざい)の誘発が指摘される「人質司法」の脱却に向けた変化が、徐々に生まれつつある。否認する容疑者を長期間勾留する「人質司法」をめぐっては、前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告(65)の事件で国際社会から批判と注目を集めた。一方、ゴーン被告の海外逃亡などを受け、法務省は逃亡防止に向けて保釈制度を見直す方針を表明。専門家からは「保釈制度の見直しの前提として、刑事司法制度の課題を議論すべき」との声が上がる。

 ゴーン被告の最初の逮捕は2018年11月。金融商品取引法違反の罪で起訴され、同年12月に同法と会社法違反(特別背任)の疑いで再逮捕された。昨年3月、弁護側の3度目の保釈請求で保釈が認められた。連続して勾留された日数は108日間だった。その後も特別背任容疑で再逮捕され、勾留日数は延べ130日間に及んだ。検察側は証拠隠滅の恐れがあるとして一貫して保釈に反対していた中、昨年12月末にゴーン被告の海外逃亡が判明した。
 法務省は今年1月、ゴーン被告の逃亡を受け、ホームページ上で「人質司法」に対する見解を掲載し、日本の刑事司法は「身体拘束によって自白を強要していない」と説明。その上で、ゴーン被告を含む保釈中の被告による逃亡事件を受け、衛星利用測位システム(GPS)の装着による逃亡防止など、対策強化に向けた法改正を法制審議会に諮問する方向で検討している。
 法務省の方針に関して、立命館大の渕野貴生教授(刑事訴訟法)は「日本での保釈中の逃亡率はかなり低く、そもそも法改正の必要がないのではないか」と指摘する。最高裁の司法統計によると、逃亡などによる保釈の取消率は、2018年度が0・8%。ここ5年は0・3~0・5%と、いずれも1%未満で推移している。
 渕野教授は「保釈保証金制度によって逃走動機を防止しており、ゴーン被告のように高額の保証金(15億円)を預けた上で逃亡の恐れがある人はどれほどいるのか。保釈制度の見直し議論は拙速だ」と批判。保釈率の向上は今後も課題だとした上で、「身体拘束と結びついた取り調べの在り方が一番の問題で、諸外国では当然認められている取り調べにおける弁護人の立ち会いも日本では認められていない。まずは、刑事司法手続きの適正化に向けた議論を深めるべきだ」と訴える。