サブスクリプションの市場予測

サブスクリプションの市場予測

 個人の所有からみんなで「利用」へ―。定額制サービス「サブスクリプション(サブスク)」が流行する背景には、そんな消費に対する価値観の変化がある。幅広い分野で新規参入が相次ぎ、サブスクビジネスが熱を帯びる半面、競争の激化で撤退を余儀なくされた事業者も出始めている。人気の秘密と課題を探った。


 市場調査の矢野経済研究所(東京)は、2020年度のサブスクの市場規模(消費者の支払額ベース)を7184億円と予測。今後も拡大を続け、23年度は8623億円と、18年度の1・5倍になる見込みだ。
 「サブスクは今の時代を表すキーワード」。そう強調するのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(52)だ。
 牛窪さんによると、フェイスブックやインスタグラムの普及で、若者らはSNSの投稿に、友人から「いいね」をもらうことで承認欲求を満たすようになった。モノの所有に価値を見いださない人が増えていると指摘し、「そんな人たちがサブスクにはまった」とみる。
 「モノがあふれる売り場から選んで買うのは決断力がいる。サブスクで借りる方が気楽だ」。同志社大の高橋広行准教授(マーケティング論)は、最近の消費者心理をこのように分析する。
 サブスクがヒットした理由の一つには、定額制の「分かりやすさ」があると指摘。サブスクでよく使われるウェブサイトは、活用状況からおすすめ商品を自動紹介する「レコメンド(推奨)機能」の性能が上がり、顧客の潜在需要をうまく掘り起こしていることも奏功しているという。
 多彩なサブスクが乱立する中、事業淘汰(とうた)も始まる。紳士服大手「AOKI」は18年春、スーツやシャツの定額利用を始めたが、約半年で撤退。焼き肉チェーン「牛角」は、一部店舗で試行した焼き肉の月額制食べ放題を今年1月に販売終了した。
 日本サブスクリプションビジネス振興会(東京)によると、近年の参入事業者のうち3~4割はすでに撤退したとみられる。商品やサービスを売って完結する「売り切り」ではなく、サブスクは継続利用で長く顧客を囲い込み、会費収入を集め続けられるかが重要となる。そのため、投資回収には時間も掛かりがちだ。
 ネットで入退会できるサブスクはお手軽な半面、顧客離れも簡単に起きる。高橋准教授は「消費者の興味は移ろいやすく、ターゲットの明確な設定が必要。分かりやすく魅力的なコンテンツを提供し続けられるかが成功のカギだ」と語る。