東京五輪を半年後に控え、混乱を避けるための妥当な判断といっていいだろう。

 男女マラソンなどで驚異的な記録が相次ぎ、規制の可能性が取り沙汰されてきた厚底靴について、ワールドアスレチックス(世界陸連)は、条件付きで使用を認める新しいルールを発表した。

 焦点となっていたのは、米スポーツ用品大手ナイキが2017年に発売を始めた「ヴェイパーフライ」シリーズだ。

 厚い靴底に炭素繊維のプレートを挟み込むことで、高いクッション性と反発力を持たせているのが特色とされる。

 男女マラソンの世界記録や男子の日本記録などがこの靴を履いた選手から生まれており、東京五輪でマラソン日本代表に決まっている男女計4人のうち3人が使っている。

 新ルールでは、新たに靴底の厚さを4センチ以内、靴底に埋めるプレートは1枚とし、4月30日以降は大会前に4カ月以上市販されていることが条件とした。

 これによって、プレートが3枚入ったような特注の「超厚底」などは使用が禁止されるが、既に市販されているタイプについては、条件を満たしているため使用できる。

 それらも禁止されれば、既に利用してきた選手への影響が大きい上、東京五輪の代表選考レースなどで有利不利が生まれかねないところだった。

 特定の人だけが利用できる高性能の靴に歯止めをかけつつ、普及品を容認したのは、公平性を保つための現実的な判断だろう。

 スポーツの記録向上に用具の進化が大きな役割を果たしてきたことは否めない。棒高跳び一つとっても、記録はポールの素材の変化と深く結びついてきた。

 だが、高度化する用具が広く容認されるためには、それがどの選手にも利用でき、不公平を作り出さないことが大前提だろう。

 世界陸連の規則にも「不公平となる助力や利益を与えるものであってはならない」とある。

 かつて競泳で世界記録を相次いで生んだ高速水着が禁止されたのも、公平に入手できないことが背景の一つにあったとされる。

 厚底靴についても「不公平となる助力」の有無を絶えず検証していく必要がある。プレートも枚数の規制だけでいいのか、素材自体の反発力に上限がなくて公平性は維持できるのか。議論すべきことはまだある。