トランプ米大統領のウクライナ疑惑を巡る上院の弾劾裁判は、権力乱用と議会妨害の2訴追条項について、いずれも「無罪」の評決を出した。

 上院は与党共和党の議員が多数を占めており、想定通りの結果だった。

 ただ、裁判には与野党の対立がそのまま持ち込まれ、証人尋問も行われなかった。審理が十分に尽くされたとは到底言えまい。疑惑は、ほぼ手つかずで残されたままである。

 裁判では、トランプ氏が政敵のバイデン前副大統領の捜査をウクライナに求めたことが、自身の大統領選を有利に運ぼうとする「外交の私物化」だったのかが焦点になった。

 野党民主党は、訴追によってトランプ氏の有罪・罷免を求める世論を盛り上げ、共和党議員の切り崩しを狙ったが、トランプ氏の弁護団は「民主党は政権転覆の手段に弾劾訴追を利用している」と強調し、徹底して党派対立をあおった。

 疑惑の詳細を知る立場にあったとして、民主党はボルトン前大統領補佐官の証人尋問を要求したが、共和党は認めなかった。不利な証言が出るのを懸念し、早期の幕引きを図りたいトランプ氏に忖度(そんたく)したのは明らかで、真相の解明より、党利を優先させた形だ。

 共和党からは重鎮議員1人が権力乱用について有罪としたほかに「造反」はなかった。大統領の権力を監視する議会の責務を放棄したと言われても仕方ないだろう。

 トランプ氏にも、米史上で弾劾訴追された大統領は3人しかいないという「不名誉」を重く受け止める姿勢は見られない。

 無罪評決が出るとすぐ、2期8年が上限の大統領に居座り続けるかのような動画をツイッターに投稿した。一夜明けたホワイトハウスでの演説でも、訴追を主導した民主党のペロシ下院議長らを「邪悪」などと罵倒し、反省や国民への謝罪は一切なかった。

 4日に発表された最新の世論調査によると、トランプ氏の支持率が49%と2017年の就任以降で最高となる一方、不支持率も50%に達した。政治の分断を印象づけた弾劾裁判は、社会の分断もあらわにした。

 11月の大統領選に向け、「敵」か「味方」かを区別するトランプ氏の言動には拍車がかかるだろう。疑惑をうやむやにしたまま、対立をあおり続けるような選挙戦では、米国の分断修復がますます遠のくだけではないか。