弁護側の最終弁論で、対面する検察官を見つめる西山さん(中央)

弁護側の最終弁論で、対面する検察官を見つめる西山さん(中央)

 滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年、男性患者の人工呼吸器を外して死亡させたとして殺人罪で懲役12年が確定し、服役した元看護助手西山美香さん(40)の裁判をやり直す再審の第2回公判が10日、大津地裁(大西直樹裁判長)で開かれた。検察側は「新たな有罪立証はしない」としており、西山さんの無罪は確定的だが、無罪論告をせず結審した。弁護側は「メンツにこだわっている」と検察側の姿勢を批判した。

 「有罪」を最後まで撤回しなかった。10日に大津地裁であった再審公判で、大津地検は、15年前と同じ起訴内容によって西山美香さん(40)を殺人罪に問うたまま、求刑を放棄した。西山さんは「なぜ無罪と言ってくれないのか」と憤り、弁護団は「こういう曖昧な論告は許されない」と批判した。

 「本件公訴事実につき、裁判所に適切な判断を求める」。この日の公判で検察側最後の主張となる論告は、わずか30秒程度で終わった。直後、傍聴席から「『ごめんなさい』はないのか」とヤジが飛んだ。検察官を見つめていた西山さんも、声にはしなかったが「同じ気持ちだった」。
 再審の扉が開いた後も、検察に振り回され続けた。2017年12月の大阪高裁の再審開始決定段階で、患者は自然死の可能性が強く推認され、滋賀県警の誘導とも言える不当な捜査は明らかになっていた。しかし、検察は最高裁への特別抗告を行い、再審開始まで2年余りかかった。
 再審に向けた三者協議で、当初は有罪立証をするとしていたが、昨年10月に新たな立証をしないと一転した。西山さんへの謝罪はなく、立証断念の理由も明かさないまま。3日の初公判では被告人質問すらせず、「冤罪(えんざい)」を検証する機会を事実上閉ざした。
 10日の論告直後の最終弁論で、弁護団は「西山さんに負担をかける再審開始への反対はすべきでなかった。有罪立証を行わないのであれば、無罪の論告をすべきだ」と検察の姿勢を非難した。
 続いて最終意見陳述をした西山さんは「特別抗告をされたことで、どんな思いで家族が過ごしてきたか分かって」と怒りをぶつけた。この日の白のジャケットと黒のスカートには「白黒はっきりしてほしい」との思いを込めていた。
 過去の再審では、検察が捜査の誤りを自ら認め、再審で「無罪」を求めたケースもある。10年前に再審無罪判決が出た足利事件では、検察が無罪論告を行い「取り返しがつかない」などと謝罪した。大津地検は今回の論告について、京都新聞社の取材に「被告人が有罪との確定審主張は撤回していない」などとコメントした。
 閉廷後の記者会見で、井戸謙一弁護団長は「検察は内心は無罪と思っているが、建前上できないということだろう。以前の結論と違っていても、無罪ならきちんと無罪手続きをする組織文化を作らないといけない」と指摘した。