受賞の直後でニュースは広がっていないようだったが、京都市内の映画館は結構いっぱいだった。後ろの高い席から見下ろすように観賞したので、地下の深さを一層感じられたかもしれない▼米アカデミー賞の作品賞に韓国の「パラサイト 半地下の家族」が輝いた。外国語映画では初の快挙。昨年のカンヌ映画祭最高賞とのダブル受賞も、ほとんど例がないのではないか▼半地下に住む貧しい一家が、大金持ちの家にパラサイト(=寄生)する。格差社会を見事に描いた物語は、それだけにとどまらないが、これ以上は書けない。パンフレットでポン・ジュノ監督自らが「ネタバレしないで」とお願いしているくらいだ▼代わりにふと思い出した日本のマンガに触れたい。つげ義春さんの1967年の「李さん一家」。郊外の一軒家の2階に在日朝鮮人の家族が住み着く話で、ちょっと似ている▼同じ貧しさを描いていても、つげさんのマンガには高度経済成長から落ちぶれる「自由」があった。映画もユーモアに満ちてはいるが、味わいは苦い。2階と地下。今の時代の貧困について改めて考えさせられる▼日本の黒澤明監督、小津安二郎監督のように、韓国の映画が注目されるきっかけになれればというポン監督。アジア映画の新しい歴史に拍手を送りたい。