JR野洲駅前の市民病院建設予定地。規模縮小の設計変更案が出されるなど整備計画が揺らいでいる(野洲市小篠原)

JR野洲駅前の市民病院建設予定地。規模縮小の設計変更案が出されるなど整備計画が揺らいでいる(野洲市小篠原)

 野洲市がJR野洲駅南口に建設を予定する市民病院の整備計画が揺らいでいる。昨年11月に建設工事の入札が不調となり、市は規模を縮小する方針を示した。1月末には突然、新病院設計にも関わってきた岡田裕作・市立野洲病院長が退職する事態となった。取材を通して、市側と病院側で認識が共有できているのか疑問に感じる場面が見受けられた。

 市民病院事業は、民間の野洲病院(同市小篠原)の経営難を受け市が2011年に検討を始めた。議会での激しい対立や住民投票を経て関連予算が議決され、市は昨年11月に工事入札を実施。しかし全国的な建設費高騰などの影響もあり、不調に終わった。

 「『苦渋の決断』で病院を作られては困る」。昨年12月、専門家らによる市民病院整備運営評価委員会で委員の指摘が飛んだ。不調を受けて市は債務負担行為の予算上限(85億円)内で建設する方針を堅持するため、6階から5階建てに変更するなど大幅な設計変更の素案を提示。その席で岡田院長が「苦渋の選択だが」と言葉を振り絞って変更内容を説明した直後だった。それを受け山仲善彰市長は「苦渋の決断で病院を作るつもりは全くない。これは重要なことだ」と即座に否定した。

 今年1月の市議会病院整備事業特別委では「予算権限や人事権限をしっかり握って今後運営する自覚があるか」との質問に岡田院長は「予算権限はない。医者の人事権に関しても、大学や教授にあってこちらにはない」と答えた。これに対して市長は「(病院予算に関しては)院長に予算の提案権限がある。だが来年度予算に関して院長からの提案が一切なく、ノーアイデア。医者をどう配置するかなどの人事権も院長に存在する」などと強い口調で否定。院長は納得できない表情で首をかしげた。

 新病院計画を担うツートップの齟齬(そご)に、特別委では「こういう場で、フォローするならまだしも否定するのは違和感を感じる」と市長の姿勢を問う意見も出た。それに対し市長は「院長が違う見解を示したのに、素通りすれば(議論が)ゆがむ。真剣な議論をしている。喧々諤々(けんけんがくがく)とやらなければいけない」と述べ、病院の経営者会議でも徹底的に議論していると強調した。

 それだけ議論しているのではなおさら、なぜ大きな方針転換を巡る対立が公式な場で露呈したのか。前院長から発言や退職の真意を聞きたいと取材を試みたが、口を閉ざされた。ある市議からは「コミュニケーションが取れていたのか疑問。一方的に抑えつけては信頼関係が作れない。副市長も長年不在で、遠慮せず市長に物事を言える人間が執行部にいないのも一因では」との声が上がる。今後、新院長の人選や工事の再入札などさまざまな山を越えていく上で、市長には多様な意見を受け止め、最善の選択を模索する姿勢を期待したい。