出費がかさんで苦しい時こそ地方自治体の力量が試される。

 滋賀県が2020年度当初予算案を発表した。三日月大造知事は「次世代、未来への投資」として、子どもを育む環境の充実を強調した。

 保育士の確保、学校の情報通信技術(ICT)化などに交じって、少額ながらきらりと光るものがある。医療的ケアの必要な児童のための看護師付き通学車の運行、地域で孤立、困窮している家庭への訪問型教育支援など、ともすれば置き去りにされがちな子どものサポートを新たに始める。

 こうした対人支援は、テクノロジーや自動化が進む時代にあっても「人」が担う仕事だろう。個々のケースに合わせた柔軟な対応や、公共の視点がいる。対象者に寄り添い、軌道に乗せてもらいたい。

 5705億円の一般会計全体では、前年度にまして土木事業が目立つ。国の「国土強靱(きょうじん)化」緊急対策に基づく河川や道路の改修、24年滋賀国体(国民スポーツ大会)の会場整備などだ。

 特に国スポ関連では、新設する主会場の陸上競技場(彦根市)、体育館(大津市)、プール(草津市)、改築する琵琶湖漕艇場(大津市)の関連予算が並ぶ。かねて経費節減を求める声が県民からは上がっているが、主会場と漕艇場は昨年、工事入札が不調となり、主会場に想定外の21億円の追加予算を余儀なくされた。

 県は支出のかさむ26年度までの財政収支見通しを、定期的に試算している。半年前には、20年度の財源不足を83億円とはじいていた。

 ところが今回の予算案では105億円に修正。米中貿易摩擦による県内の景気と県税収入の下振れリスクが思いのほか大きく、やりくりしてもなお不足額が拡大したという。

 湖国には輸出向けの製造業が多く、通商問題の影響はこれからも軽視できない。新型コロナウイルスの経済への波及も心配だ。終息が遅れ、人の動きが滞れば、県が「戦国」「お城」をテーマに後押しする20年度の湖国観光も無傷ではいられまい。

 自然災害を含め、想定外の状況への対応力はあるか。国スポへの投資は身の丈に合っているか。常に問い直し、県民に説明しなければならない。

 同時に、自由に使える財源が限られる時こそ、知恵と工夫で湖国らしい予算が組めるかどうかが問われよう。

 だが、その点では物足りないと言わざるを得ない。予算案発表の記者会見で、三日月知事が「琵琶湖」に直接言及する場面はほぼなかった。年明けに宣言した「県内二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロ」の2050年達成も、具体策は見えない。

 CO2削減に関しては、かつての「石けん運動」のような県民ぐるみのムーブメントをぜひ起こしたい。だが、そのためには誰もが参加したくなる魅力的な脱炭素の仕組みを創出する必要がある。技術革新に頼るのではなく、人にしか出せないアイデアで「環境県・滋賀ここにあり」という気概を示してほしい。