新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が、経済に深刻な影を落とし始めている。

 中国からの部品調達が困難になった一部の自動車メーカーが国内の生産ライン停止を決めたほか、京都や滋賀を含め全国の観光地で宿泊キャンセルが出るなどの影響が出ている。

 政府は中小・小規模事業者の資金繰り支援などを盛り込む緊急対策を週内にもまとめる方針で、自治体も融資制度や相談態勢を拡充させるなどの対応を進めている。

 先の見えない状況に、事業者の不安は募っている。政府や自治体は感染拡大の防止とともに、経済への影響を詳細に把握し、的確な支援を徹底してほしい。

 多くの企業が製造拠点を設け、「世界の工場」と呼ばれる中国だが、人の移動や物流が制限され、経済活動の沈滞が続いている。

 オムロンや京セラ、村田製作所などの京都企業も、現地当局の意向を受け、春節休暇明けの中国拠点の操業再開を延期した。

 任天堂は、多くを中国の委託先で製造している主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」と周辺機器について、日本への出荷の遅れが避けられないと明らかにした。

 重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が拡大した2003年の中国は、国内総生産(GDP)の世界シェアが4%程度だった。19年には約16%と世界2位の経済大国に躍進している。日本の対中輸出額も、6兆6千億円から14兆6千億円へ大きく増加している。

 中国の停滞が長引けば、国内生産に影響が出るのは必至だ。企業は部品供給網や生産体制の見直しが迫られよう。

 中国の消費の冷え込みによる影響も心配される。

 日本を訪れる中国人は03年には44万人だったが、19年には訪日外国人の中で最も多い959万人になった。インバウンド消費の落ち込みが、地域経済を疲弊させかねない。

 懸念されるのは、日本国内で感染が拡大しているとの認識が広がり、欧米などでも「日本離れ」が進むことだ。日本人の観光自粛につながる恐れもある。風評被害を防ぐ手だても重要になろう。

 経済の悪化で最も影響を受けやすいのは、中小零細事業所だ。大手メーカーの下請け企業や地方の旅館・ホテル、土産物店には経営基盤が弱い事業所が多い。

 企業や事業所も危機管理態勢をいま一度見つめ直し、感染拡大によるリスクに備える必要がある。