学校の帰り、稲を稲木に掛ける手伝いをしに田んぼへ向かった場面。「お母ちゃーん、お母ちゃーんと手を振りながら大声で叫びました。お母ちゃんも手を振ってくれました」―。ラジオから懐かしい収穫の情景が流れてくる▼綾部市のFMいかるで市民パーソナリティーを務める八木栄子さん(69)は、昨春に自費出版した本「わたしのたからもん」に書いた話を番組で朗読している▼八木さんは5年前にパーキンソン病と診断された。全身の痛みで眠れない夜、浮かぶのは少女時代の思い出だった。家族や友との楽しい時間、地域が家族のようだった昭和30年代▼あふれる思いをノートにつづり、書いている時は痛みを忘れた。チャンバラごっこ、海水浴…誰もが経験したような41編の話にまとめると、「心温まる」「涙ぐんだ」と感想が寄せられた▼多くの人に届けたいとパーソナリティーに応募した。市民が毎月30分の番組を持つことができる。秋から始めると同級生から「聴いてるよ」とメッセージが届いた。「喜んでもらえると勇気が出て、自信になる」▼きょうはラジオの重要性について意識を高める国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界ラジオデー」。ラジオは共感のメディアだと言われる。小さな手作り番組が、そのことを教えてくれる。