救護施設の整備が計画されていた土地(京都市伏見区)

救護施設の整備が計画されていた土地(京都市伏見区)

 京都市は市中央保護所(下京区)を廃止し、民設民営の救護施設を伏見区に開設する計画を断念したことを明らかにした。計画を巡っては、建設予定地と市境で接する向日市側の住民などが反発。着工のめどが立たず、事業者は資金調達に支障が出たとして撤退する意向を市に示した。

 「住民への説明を尽くしたが、不安を払拭(ふっしょく)できなかった。非常に残念だ」。2月13日午後、京都市役所で記者会見した市幹部は声を落とした。救護施設は中央保護所の指定管理者でもある社会福祉法人「みなと寮」(大阪府河内長野市)が設置を提案し、市が了承。事業者公募で唯一手を挙げた同法人が2018年8月に選定され、20年度に開設予定だった。

 「必要性は分かるが、なぜこの場所なのか」「トラブルが心配」。予定地は向日市の住宅街に近く、住民から反発や不安の声が上がった。

 京都市は18年11月から伏見区と向日市で住民説明会を計4回開き、その後も地元と協議を続けてきたが難航。18年度に予算計上していた国と市の整備助成金約1億3千万円を19年度に繰り越した。事業を継続するためには20年度に再度繰り越す必要があったが、国が認めなかった。

 事業継続を断念した同法人の笹井信次事務局長は「住民の十分な理解を得られず、不本意ながら事業が立ち行かないと判断した。利用者と地域の共生を目指していただけに残念」と話した。一方、向日市の上植野町自治連合会の藤田和男会長は「なぜ利便性の良い中心部でなく、市境でなければならないのか。納得できる説明や十分な知識を得る機会がなかった」と市と事業者の進め方に疑問を呈す。初めての住民説明会が着工予定の前月だったことについて、「建設ありきの姿勢で、対応がまずかった」と漏らす住民もいた。

 市幹部は会見で「場所は適切だった。議論が入所者と地域のトラブルの問題に終始してしまった」と述べ、必要性の議論に踏み込めなかったことに苦渋の表情を浮かべた。中央保護所の老朽化や入所者の高齢化などを挙げ、「必要な施設であることに変わりはない」と強調。中央保護所の指定管理期間が終わる21年度末までに、施設の整備・運営事業者を再公募する方向で検討するという。

 貧困問題に詳しい佛教大の加美嘉史教授(社会福祉学)は「生活困窮者が地域で暮らすにはどうすればいいかという視点に立ち、今後は施設建設を決める前に、入所経験者や支援者の声を踏まえながら、住民と対話することが必要ではないか」と話している。