誰一人取り残さない-。4期目をスタートさせた京都市の門川大作市長が強調してきたキャッチフレーズだ。国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」にも掲げられている。

 人口減少時代に、地球規模の課題に対応できる成熟した都市づくりを目指すということだろう。その思いは、市長選の公約141項目の8割を反映させたという2020年度当初予算案にどこまで盛り込めたか。

 施策から市民を取り残さないとの意図は、子育てや福祉の分野に込められているようだ。

 国基準での待機児童ゼロ継続に向け保育所の新設や受け入れ枠拡大を目指すほか、保育士確保や病児・病後児保育を拡充する。「ひきこもり」の相談窓口一元化や支援員配置、発達障害児者へのサポート事業などもその一環といえるだろう。

 若い世代や社会的弱者への目配りは、生活不安を和らげ、格差緩和にも貢献しよう。当事者の意見をよく聞き、漏れのない制度設計につなげてほしい。

 観光分野では、さらなる誘客へ、事業の拡充を図った。

 海外の富裕層向けにまだ知られていない観光コンテンツ開発や、通訳ガイドの活動支援、宿泊客数を減らさずに観光地を分散させるなどの方策を示した。

 「観光公害」に対しては、観光バスの路上滞留や外国人客へのマナー順守などを狙い、情報ツールを使った新たな啓発に取り組むという。ただ、まちの混雑やホテルの急増といった市民生活に関わる課題への答えになっているとは言い難い。

 門川氏は「観光客の数を求めず、質を高めて数を維持する政策に転換した」とするが、その成果が見えなければ市民の期待に応えることはできまい。

 混雑緩和やホテル対策を観光政策の枠内で考えるのは限界があるのではないか。都市のあり方も含めた大きな視点で対応策を打ち出す必要があろう。

 市は、自然災害やまちの空洞化などの危機に対する強靱(きょうじん)性や回復力を意味する「レジリエンス」を市の基本理念とする。

 予算案では、御薗橋(北区)など橋りょうの耐震補強や護岸改修といった事業に加え、山林の危険木伐採や台風で倒れた樹木再生を支援し、空き家の活用・流通にも本腰を入れる。

 都市機能の耐性を高め、しなやかに復旧、復元させて日常性を維持する一歩にもつながろう。無駄のない整備を求めたい。

 懸念されるのは財政状況だ。

 一般財源収入はここ10年で最大の下げ幅を見込む。事業費を切り詰めたうえ、特例的に認められる市債(借金)を緊急避難的に初めて発行し、将来の借金返済に充てる基金を取り崩すなど厳しいやりくりでしのぐ。

 財政のレジリエンスが危うい状況だ。市は20年度、外部有識者会議を設けて歳入歳出改革を進めるという。施策の見直しや住民サービスの取捨選択もテーマになる可能性がある。

 住民を巻き込んだ議論の場も必要ではないか。門川氏には、持続可能な都市の将来像を描き直す努力が課せられている。