定期的に訪れる男性宅で診療に当たる岡山さん。「患者や家族の思いを尊重することが第一」と語る(京都市中京区)

定期的に訪れる男性宅で診療に当たる岡山さん。「患者や家族の思いを尊重することが第一」と語る(京都市中京区)

医療器具の入った大きなカバンを持ち、自ら車を運転して患者のもとへ向かう

医療器具の入った大きなカバンを持ち、自ら車を運転して患者のもとへ向かう

 「飲みにくい薬はないですか」。約1年半前から2週間に1度通う、京都市中京区の80代の高齢男性宅。心臓に持病がある男性の近況を丁寧に聞き、血圧測定や採血などを行う。「話をしっかり聞いてもらえるので本当にありがたい」と、男性は安心した表情を見せた。

 岡山容子さん(48)=京都市左京区=は在宅医療を支える訪問診療医として現在、市内に住む約60人の患者に寄り添う。訪問を待つ患者や家族のもとへ、点滴や血圧計など医療器具をぎっしりと詰め込んだかばんを手に持ち、車のハンドルを自ら握って出掛けていく。
 病院ではなく主に患者の自宅で診療を行う在宅医療。認知症、末期がん、神経難病、高齢で通院が難しいなど、個々の病状や抱える悩みもさまざまだ。終末期の患者も多く、その死を看取(みと)ることも少なくない。「最期の日を住み慣れた場所で穏やかに迎えてほしい」との思いで日々、診療に当たっている。
 在宅医療に携わる前は大学病院などで麻酔科医として勤務していた。しかし、「俺が治してやっている」というごう慢な医者の態度に、同じ医者として疑問を抱いていた。病院で死を前にした患者の要望が無視され、ぞんざいに扱われる様子を何度も目にして心を痛めた。
 そんな時に出合ったのが、病気や老衰などで回復が見込めない患者らを診る終末期医療。「治してやる、ではなく『治らない人に最後まで寄り添う』医療が自分には合っている」。終末期の患者らの訪問診療に携わるようになり、2015年、在宅医療を支援する診療所を中京区に開設した。
 医者の意見を押し付けず正確な情報を伝え、患者や家族の思いを尊重することを第一に考える。「いつか必ずやって来る死を、怖がることなく安心して迎えられるように、一人一人の気持ちや体力に合った道を一緒に考えていきたい」。死を目前にして揺れ動く患者の心を受け止め、大切な人を見送る家族に寄り添いながら歩く「道先案内人」でありたいと願う。