従業員が希望すれば70歳まで働き続けられるよう、就業機会の確保を企業の努力義務とする法案が今国会で審議される。

 元気で就労意欲が高い高齢者は少なくない。その経験や知識が役立てば社会に有益であり、「70歳現役社会」へ一歩踏み出すことになる。とはいえ新たに盛り込むフリーランスへの業務委託など働き手の保護への配慮が欠かせない。

 高年齢者雇用安定法など六つの改正案を束ねた法案で、政府は来年4月からの実施を目指す。少子高齢化が加速する中、高齢者の就労を一層推進するのが狙いだ。

 現行制度は希望者全員を65歳まで雇うよう企業に義務付け、就業機会確保の選択肢は定年延長、定年廃止、継続雇用制度の導入の三つだ。改正案はさらに起業やフリーランスを希望する人への業務委託と、自社関連の社会貢献事業への従事を選択肢に加える。

 70歳までの就業は、安倍晋三政権が掲げる「全世代型社会保障改革」の目玉政策だ。高齢者が活躍して社会保障制度を「支える側」に回ることで、人手不足や社会保障費の増大を一挙両得で解決できるとみているのだろう。

 年金受給年齢の引き上げなどによって65歳まで働くのが一般的になり、70歳就労も徐々に進みつつある。総務省の2019年労働力調査によると、65歳以上の就業者は892万人に上り、4人に1人が仕事に就いているという。

 ただ課題は多い。新たな選択肢となるフリーランスへの業務委託などは雇用関係がない。自由な働き方ができる半面、最低賃金や労働時間規制、労災制度の保護を受けられず、働く人としての保護が決して十分とはいえない。

 高齢者は体力や健康面の不安に加え、労災発生率も高く、18年には休業4日以上の労災被害のうち60歳以上が4分の1を占めた。対策は急務だ。

 現役より給料水準や職位が大幅に下がれば、働く意欲に関わる。処遇改善も避けて通れまい。

 だが高齢者の就業拡大は企業の人事戦略や処遇体系に影響が出る。とりわけ負担増の危惧が強い中小・零細企業への目配りが必要だ。

 「人生100年時代」といわれるが、健康状態や仕事への意欲、人生観は人それぞれだ。誰もが働き続けたいと思っているわけではなく、老後資金や年金の目減りで働かざるを得ないのが現実ではないか。安心して老後を迎え、暮らせる社会を築くために、国会で論議を深めてもらいたい。