新型コロナウイルスによる肺炎で、国内で初めての死者が出た。

 厚生労働省は同ウイルスに感染した神奈川県の80代女性が死亡したと発表した。女性の義理の息子で東京都在住の70代男性タクシー運転手と、和歌山県の50代男性外科医の感染も確認された。

 3人とも海外渡航歴がなく、国内で感染した可能性が高い。

 国内流入を阻止する水際対策を重視してきた新型肺炎への対処は新たな局面に入ったといえる。政府は市中でも感染が広がっていることを前提に、ウイルス検査や治療の態勢整備を急ぐ必要がある。

 厚労省によると、死亡した女性は1月22日に倦怠(けんたい)感があり、2月1日に肺炎と診断された。亡くなる前日の12日にウイルス検査を行い、死亡後に陽性と確認された。

 運転手の男性は1月29日に発熱しており、和歌山の外科医も同31日に熱と倦怠感が出ていた。外科医が勤務する病院を受診した70代男性の感染も明らかになった。外科医との接触はなかったという。

 これまでの国内感染は、中国に渡航歴があったり、中国から来た人と接していたりと、感染経路がたどれる事例ばかりだった。

 新型コロナウイルスは無症状でも感染する可能性が国内外で指摘されている。発症しても熱やせきだけですむなど、軽症のまま回復する人が多いとされている。

 本人が感染に気付かないうちにウイルスを広めている可能性は否定できないだろう。

 重症化のリスクが高いとされている高齢者や糖尿病、心臓病などの持病を抱える人たちには、特に配慮する必要がある。高齢者施設や医療機関は、徹底した感染防止策が求められる。

 国内での感染の広がりが疑われる状況になり、今後、ウイルス検査を希望する人が増えることも予想される。

 加藤勝信厚労相は、中国湖北省など流行地域との関連がある場合に限っているウイルス検査の拡大を検討する考えを示したが、受け入れ態勢が整っていない地域は多いだろう。医療現場の混乱を避けるためにも、全国規模で検査態勢の整備を急ぎ、検査可能な機関などの情報を提供する必要がある。

 専門家によると、新型ウイルスの感染力はインフルエンザと同程度で、致死率も重症急性呼吸器症候群(SARS)より低いとされている。私たちも手洗いや「せきエチケット」をこれまで以上に徹底し、過度に恐れることなく、冷静に対応しなければならない。