地域おこしのイベントで歌を披露するフルーレット(草津市野路1丁目)

地域おこしのイベントで歌を披露するフルーレット(草津市野路1丁目)

 軽快な歌やダンスと愛くるしい笑顔でファンをとりこにするアイドルたち。ステージで喝采を浴びる彼女たちは何を見つめているのか? 滋賀県を拠点に活動するご当地アイドルグループ「フルーレット」のイベント出演を取材した。笑顔の裏には、強い決意と地道な努力があった。

■実力派ご当地アイドル「フルーレット」

 11月中旬に草津市のJR南草津駅前で開かれた地域おこしイベント。特設ステージ前に多くの子どもたちやファンが集まった。音楽が鳴り始め、どっと歓声が沸く。小袖とはかまを模した和風デザインの衣装に身を包んだリーダー辻梨央さん(20)ら7人が、軽やかにステージに姿を現した。20分間で5曲を披露。息の合ったダンスと伸びやかな歌声に、ファンたちは盛んに声援を送った。

 2013年結成のフルーレットは、ご当地アイドルが歌やダンスを競うテレビ局主催の大会で、17年に全国1位に輝いた実力派グループだ。別の大会でも16~18年、3回連続で関西1位となった。

 メンバーは他に涼賀あかりさん(19)、清水満月さん(17)、那須雅さん(18)、赤田陽菜さん(19)、岡田莉那さん(17)、北川歩乃海さん(15)。18曲のオリジナル曲があり、来年1月に9枚目のCDを発売する。16年夏から大阪で毎月定例ライブも開く。

 7人が所属する芸能事務所「フレンド滋賀」(草津市)の石澤正義代表(61)は「皆、本気で芸能界に入りたくて根性がある」と目を細める。

■事務所は赤字、厳しいレッスン…

 ただ事務所の収支は慢性的に赤字だ。石澤さんは学生マンション管理会社の社長も務め、同社の収益を事務所運営に充てる。イベントやテレビ出演に向けた人脈作りや交渉、ファンとの付き合い方も異業種出身の石澤さんはゼロから試行錯誤してきた。「この業界、売れるかどうかは相手に気に入られるか次第」。知り合ったテレビ局プロデューサーには7人を直接会わせてアピールする。東京で売り出すため、来年1月から都内のイベント会社と提携する。「ビジネス的には割に合わないが、上を目指してやれることはしたい」

 練習は厳しい。講師を招き3時間のレッスンを毎週2回。「精神的に不安定な時期があり、『しんどいなら辞めたら』と何回も言ったことがある。ステージでは生き生きした表情になるので、食らいついていってほしい」。この日、岡田さんの母咲代里さん(37)=大津市=はファンの後ろからそっと娘を見守った。

 イベント出演後、事務所前でメンバーとファンの写真撮影会が開かれ、約70人が詰めかけた。千葉県から訪れた男性(55)は「ローカルアイドルの距離の近さに、パフォーマンス力もある」と太鼓判を押す。大津市の男性(18)は「年が近く友達みたい」という。

 事務所の壁にはメンバーごとの撮影券の売り上げ枚数を比較した棒グラフが貼ってある。一番人気の清水さんは「何をしたらお客が喜ぶかをずっと考えている。自分は、会っただけで相手が笑顔になる王道のアイドルでいたい」と話す。

 人気は徐々に高まっている。リーダーの辻さんは言う。「コアなファンだけでなく親子連れらにも名前が知られ、以前より手応えはある。さらにファンを増やすためライブに力を入れていく。目標のメジャーデビューへ、次の1年が勝負」

■ピーク過ぎた「ご当地アイドル」、鍵は「ブランド確立」

 ブームのピークは過ぎたといわれる「ご当地アイドル」だが、現在も全国で千組以上が活動するという。メジャーデビューを夢見ながらも、資金の行き詰まりやメンバー減少を理由に数年で解散することも多い。

 毎日放送(大阪市)でアイドルイベントも手掛けるMビジョン推進局マネージャー横山孝文さん(51)によると、約10年前のAKB人気で会話や握手ができる身近なアイドルが注目され、2013年のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」放送で、ご当地アイドルが一気に増えた。自治体による運営や異業種からの進出も増えた。

 ただ、今のアイドルファンは一部の熱心な層に限られ、地方では人気が広まりにくい。ファン層の厚い都市部でライブ出演を増やすと経費がかさむ。メンバーは中高生が中心で、受験や契約違反で脱退することも多く、数年で解散するグループが大半という。長浜市が14年に結成した「キャンセ浜姫」も活動期間は3年だった。

 大手レコード会社からCDを売り出す「メジャーデビュー」を目指すグループは多いが、横山さんは「CDが売れない昨今は大手も販促活動に積極的でない。他がやらないことをやり、自分たちのブランドを確立することが大切」と話す。