東京都港区が南青山で進めた児童相談所建設計画が周辺住民の強い反対に遭うなど、近年、子育て支援や福祉の施設が「迷惑施設」のように扱われるケースが目立つ。なぜ問題がこじれてしまうのか、どうすれば解決できるのか。地域の紛争に詳しい京都教育大の土屋雄一郎教授(環境社会学)に聞いた。

 ―最近の動きをどう感じるか。
 「『社会的な必要性は分かるが、自宅近くはお断り』と主張する運動のことを『NIMBY』(ニンビー=Not In My Back Yard)と言うが、5、6年前からその対象が広がってきた。従来は原発や軍事基地のように存在自体の是非が問われる施設が対象だったが、最近は保育所など思いもしなかったような施設も対象になっている」

 ―そうなった背景は。
 「地域社会の結びつきが弱くなったことに一因がある。かつては自治会長らが住民の意見を集約し、反対意見があっても地域で話し合う土台があったが、価値観や生活様式が多様化した今、意見をまとめることができなくなった」

 ―住民側に問題があるとの見方もある。
 「反対する住民が『利己的だ』と批判される風潮には違和感を抱く。問題がこじれる多くの場合、なぜその立地になったのか、他の選択肢はなかったのかなどの疑問に応えないまま、住民に受け入れるかどうかを迫っている。住民の考えを『エゴ』と切り捨てず、反対する背景を考えるべきだ」

 ―解決するために設置者側に求められることは。
 「設置者側は住民の理解だけでなく、共感を得るように努めなければならない。何度協議しても、施設がオープンしないと分からない部分はある。住民と十分に向き合い、『あなたがそこまで言うから仕方ない』と言ってもらえるような人間関係を築く必要がある。地域の魅力がこのように高まるという『夢』を用意することも大切だ」