「西京区・洛西地域の新たな活性化懇談会」が作成したビジョンと「洛西京都市立芸大跡地検討会」が作成した提言書

「西京区・洛西地域の新たな活性化懇談会」が作成したビジョンと「洛西京都市立芸大跡地検討会」が作成した提言書

 京都市西京区の市立芸術大が2023年度中に、下京区に移転する。だがいまだに京都市は、跡地の活用案をまとめていない。移転まであと3年。先行きが見えない市の対応に、住民の期待と不安が高まっている。

 JR京都駅東側にある崇仁地域に大学を移転させる計画を市が正式に発表したのは、14年1月。現在、跡地の活用については、公的利用か民間活用か、もしくは両方を採るのか、まだ方向性を探っている段階だ。市行財政局総務課は「まだ時間はある。決定が遅れているわけではない」とする。だが6年の間に、少しでも検討を進めることはできなかったのだろうか。

 そのチャンスの一つが、同年7月にあったかもしれない。市は大学周辺の住民や識者、市職員ら15人をメンバーにした「西京区・洛西地域の新たな活性化懇談会」を設置。意見交換や円卓会議を重ね、16年12月には「活性化ビジョン」を作成した。だが、市に提出されたビジョンには、跡地活用は直接述べられていなかった。

 市は、懇談会について「西京区全体の活性化を検討することが目的。もともと跡地活用を考えるためのものではない」とするが、もう一歩踏み込んでもよかった。大学の学生や教員たちは地域の芸術教育の発展に大きく貢献し、何人もの住民が「芸大は地域の核だった」と口をそろえる。「活性化の検討」には、地域に愛された場所の将来像を考えることも入るのではないだろうか。

 跡地活用の方向性の検討に向けて昨年2月から、市行財政局総務課は、民間から提案を聞き取る「サウンディング型市場調査」を行っている。まだ民間企業側から具体的な提案はないが、現在の校舎をどうするのかを含めて意見を募っている。

 大学の校舎は、1980年の移転に際して約82億1900万円かけて建設された。土地や建物は、利用する人がいなくても維持管理に費用がかかる。無人の校舎を守るために税金を投入する余裕が、市にあるとは思えない。多大な費用をかけて造った建物を無理のない範囲で再利用できないか、民間からの画期的な提案を期待したい。

 住民主導で立ち上げた「洛西京都市立芸大跡地検討会」は、ワークショップや近隣地域との意見交換を重ね、17年4月に「洛西アートヒル計画」と名付けた提言書を市に提出したが、同検討会も現在は活動が止まってる。一方、移転先の崇仁地域はシンポジウムや関連イベントを開くなど、年々盛り上がりを見せる。「このままだと洛西地域がさびれてしまう。何か住民側も動かなければいけない」と住民は焦りを募らせる。

 人口減少が進む地域で、核となる施設がなくなるのは大きな痛手だ。新たな「核」をつくるため、行政には少しでも早く、跡地活用案を固めることを期待したい。